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三菱 i-MiEV(アイミーヴ)


  大袈裟ではなく、SF映画や小説で描かれていたシーンが、もうじき現実のものになる。

 

  それは、こういうシーンだ。主人公がクルマで帰宅する。彼もしくは彼女はクルマを自宅ガレージに停めると、クルマを降りて、ガレージの奥の方に歩いていく。そこには電源コンセントからコードが生えていて、その先端のプラグをクルマに差し込んでから、家のドアを開けて、帰宅する。

 

  そう、主人公は電気自動車で通勤していて、帰宅したり、オフィスの駐車場に停める時には充電コードをクルマに差し込んで、駐車中に充電し“満タン”にしておくのだ。

 

  三菱i-MiEVが、そのSFを現実のものとした。

 

  i-MiEVは、すでに発売されている三菱自動車の軽自動車「i」(アイ)の車体を利用し、ガソリンエンジンの代わりに電気モーターとバッテリーを搭載し、100パーセント電気の力だけで走る。トヨタ・プリウスやホンダ・インサイトなどのハイブリッドカーがガソリンエンジンと電気モーターを組み合わせているのと根本的に異なっている。

 

  ガソリンを燃やさないから、電気自動車はCO2も排ガスも一切排出しない。その上、燃費だっていい。だから世界中の自動車メーカーが、いま躍起になって開発を繰り広げている。

 

  電気自動車というものは、自動車創世記から造られてきたが、現代的なメカニズムを備えた量産型としてはi-MiEVが世界初だと解釈して構わないだろう。

 

  運転すると、「i」よりもふたクラス上級のクルマに乗っている感じがする。それもそのはず、電気モーターは回転開始から最大トルクが発生するという特性を持っているので、ダッシュが鋭い。また、重いバッテリーをたくさん積んでいるので、副次的にだが乗り心地が落ち着いている。(iは軽微だが)軽自動車にありがちなヒョコヒョコとした挙動がまったくない。

 

  良いこと尽くめの電気自動車だが、アキレス腱がある。航続距離だ。i-MiEVのカタログデータでは、満充電で走れる距離は160kmとなっている。ヒーターやエアコンなどの電気装備をどれだけ使うかで大きく左右されてしまう。

 

  充電に必要な時間は、家庭用の100ボルト電源で約14時間、200ボルト電源では約7時間、200ボルトの急速充電器を使えば約30分。現在、ガソリンスタンドやコンビニ、100円パーキングなどで充電器のインフラ整備が進められている。i-MiEVは、未来を手元に引き寄せた。

 

 

 

 

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モータリングライター 1961年東京生まれ。自動車と自動車にかかわる人間についての雑誌記事や単行本を執筆している。主な著書に、『10年10万キロストーリー』(1~4)、『セナと日本人』、『地球自動車旅行』、『ニッポン・ミニ・ストーリー』、『レクサスのジレンマ』、『力説自動車』などがある。ここ数年、外国を長距離クルマで走ることが続いている。2003年には、東京からロシア・ウラジオストクを経由してポルトガル・ロカ岬まで自らのトヨタ・カルディナでユーラシア大陸を横断。2006年には、ダイムラー・クライスラーのイベント『パリ~北京』に参加し、ロシア・エカテリンブルクから北京までメルセデスベンツE320CDIで走破。2007年に引き続き、今年も、『トランスシベリア2008』に出場し、総合10位、クラス9位で完走した。
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