フィアット500の前評判が高い。フィアット500は、1960年代にイタリアのモータリゼーションの底辺を支えた同名のクルマのイメージとデザインを活用した小型車だ。
ミニやフォルクスワーゲン・ニュービートル、フォード・マスタングなどと、同様のアイデアを採る“セルフサンプリングカー”だ。
過去の大ベストセラーのイメージとデザインを自らサンプリングしてブランド価値を上げようという点で、これらのクルマは一致している。決して、“オリジナルの新型”ではないところが、セルフサンプリングカーの商品企画のミソだ。
ミニは40年以上作り続けられ、製造する会社が代わった。ビートルの後継にはゴルフが就き、ニュービートルはそのゴルフをベースとして、エンジン搭載位置を後ろから前に移した。
フィアット500も、ニュービートルに準じている。名前は同じでも、60年代のフィアット500とは、もう何の関係もない。フィアット・パンダをベースにして、オリジナルよりもふた回りほど大きなクルマに仕上げられた。
フィアット500は、ミニやビートルほど日本人に馴染みがあるわけではない。オリジナルも輸入されてはいたが、数は限られていた。モンキー・パンチの漫画「ルパン3世」で主人公のルパンがオリジナルのフィアット500に乗っていたが、デフォルメされていた。
だから、新しいフィアット500を眼の前にして、オリジナルをパッと連想する人は多くないはずなのだ。しかし、新しいフィアット500の発表会々場である東京千代田区九段のイタリア文化会館の前を通り掛った多くの人が、足を止めて見入っていた。これは、オリジナルを知っているかどうかにかかわらず、このクルマが持つ魅力が成せる業に違いない。人なつこいルックスに、独特のプロポーションは現代の機能一点張りのクルマたちの中にあって、とても個性的だ。
走っても、実に運転しやすい。インテリアの造形も、とても魅力的。ボディカラーを反復したインテリアを持つグレードを選べば、とてもお洒落だ。個人的には、ネイビーのボディにアイボリーのインテリアの組み合わせが気に入った。オリジナルと知っている人には懐かしさを、知らない人には新鮮な驚きを感じさせてくれるだろう。