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ランドローバー・フリーランダー2


  20年ぐらい前までだったら、オフロードタイプの4輪駆動車は、まとめて“ジープ”って呼ばれていた。新聞報道やテレビニュースでも、十把一絡げだった。それが、日本で三菱パジェロが、アメリカではフォード・エクスプローラーが大ヒットした頃から、オフロード4輪駆動車は“SUV”(Sports Utility Vehicle)などと呼ばれるようになって、ひとつの大きなジャンルにまで成長した。


  ダイムラーベンツは軍用のGクラスを民生用に転用した上に、新たにMLクラスをアメリカで作り始め、ポルシェは、カイエンでSUVマーケットに進出した。


ランドローバー・フリーランダー2


ランドローバー・フリーランダー2  しかし、この分野にはランドローバーという老舗がある。1940年代から、ジープに代わる軍用車を専門に作ってきたイギリスの自動車メーカーだ。現在は、アメリカのフォード・グループにあり、同門のジャガーとともに、インドのタタ・モーターズに売却されそうになっているが、その話はまたいずれ。


  老舗のランドローバーは操を守り続けている。潔いくらいに商いを限定し、オフロード4輪駆動車だけを作り続けている。現在、生産しているのは5車種。いずれも、抜群の悪路走破性能を備えていながら、アスファルトの上でもヘタなセダン顔負けの上質な乗り心地を持っている。旧世代のランドローバー各車は、革とウッドを用いた古風なイギリス流のインテリアだったが、新世代はすべてモダンに、クールに一新された。

 

ランドローバー・フリーランダー2  特に、今年、フルモデルチェンジしたフリーランダー2は車名に“2”と付くように、エンジンから内外デザインまですべてが改められた。旧型とは、すべて変わった。兄貴分たちと同じ「テレインレスポンス」という駆動制御システムが装備され、走行性能は飛躍的に高まった。スタイリングも、兄貴たちに似て、品が出てきた。

 


ランドローバー・フリーランダー2  いいこと尽くめなフリーランダー2だが、気になるのは価格だった。ディスカバリー兄貴は、フルモデルチェンジで内容が一新されたが、その分だけ価格も上がってしまった。フリーランダー2も、そのパターンが心配されたが、杞憂だった。逆に、高くなったディスカバリーの新型に二の足を踏んでいる旧型ユーザーの食指が動くような、こなれた値付けがされた。ここまで普及したオフロード4輪駆動車で“実際に道なき道をどれだけ走るのか”という議論は意味を成さなくなった。フリーランダー2は、アスファルトの上しか走らなくても大いに満足できるのだ。

 

 


ランドローバー・フリーランダー2

モータリングライター 1961年東京生まれ。自動車と自動車にかかわる人間についての雑誌記事や単行本を執筆している。主な著書に、『10年10万キロストーリー』(1~4)、『セナと日本人』、『地球自動車旅行』、『ニッポン・ミニ・ストーリー』、『レクサスのジレンマ』、『力説自動車』などがある。ここ数年、外国を長距離クルマで走ることが続いている。2003年には、東京からロシア・ウラジオストクを経由してポルトガル・ロカ岬まで自らのトヨタ・カルディナでユーラシア大陸を横断。2006年には、ダイムラー・クライスラーのイベント『パリ~北京』に参加し、ロシア・エカテリンブルクから北京までメルセデスベンツE320CDIで走破。2007年に引き続き、今年も、『トランスシベリア2008』に出場し、総合10位、クラス9位で完走した。
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