日本の一部の若者たちにも、「旧車ブーム」というものがあるが、ここに参加している車は全く次元を超えた価値を持つ車が勢ぞろいしている。しかも「ミッレミリア」という伝説の公道レースの日本版であるがゆえに本家同様に1000マイルという距離を走破しなければならないのだ。50年~90年も前の車を公道で走らせる苦労は大変なものがある。その車そのものも大変高価ではあるが、それを維持すること、さらに走らせることは大変なコストと手間のかかることなのだ。人によってはパーツひとつを取るためにわざわざヨーロッパへと出向き、廃車になった同じ車を購入してパーツ交換用に用意しておくようなこともしなければならない。本人のクラシックカーに対する情熱とそれにかけられる財力があってこそこの趣味が成立するのである。
今回参加しているクラシックカーをもう一度見直してみると50年代~60年代のクルマが非常に多い。それ以前の年代のクラシックカーでレースに参加できる車が少なくなってきているというのもあるだろうが、その頃の欧州車というのは本当に魅力的なクルマを作っていたんだなあという気がする。今回ちょっと気になったというか初めて見ることができたのがアウディの礎となったブランドDKWのDKW F91 ゾンデルクラッセ。
DKW(Dampf Kraft Wagen)は、1932年アウディ、ホルヒ、ヴァンダラーと合併してアウトウニオンになったもの。2ストローク3気筒996cc/38馬力のエンジンを積み、クラシカルな中に愛嬌があってとても魅力的だった。他にもまるで弾丸のようなOSCA MT4や曲線だけで出来ているようなよき時代のJAGAR ROADSTERなども何度見ても飽きない名車が参加していた。
初日の悪天候の中、揃った名車たちは裏磐梯から栃木のツインリンクもてぎまで赴き、さらに明治神宮までの1都9県、96市区町村をめぐり、実に1501kmもの行程を旅することになる。無事に4日間の行程を経て、表彰式をもって全日程を終了したLa Festa Mille Migia 2010。初日の大雨に始まった今年のラリーは参加台数108台のうち94台がゴールまで辿り着き、87台が全てのスタンプポイントを通過し完走という結果。今年の優勝は昨年に続き連覇を果たしたゼッケン3番の竹元さん夫妻。準優勝はイタリアのMille Migliaでも優勝経験のあるゼッケン32番ルチアーノ・ヴィアロさん、ダミアン・チェザーリオさんペアとなった。
Text:Takamasa Wada