10月9日、初秋の肌寒い小雨の降る中、原宿・明治神宮の駐車場には、日本に現存する世界の名車たちが勢ぞろいした。しかもこの車たちは実際にレースに参加することの出来る現役の車たち。クラシックカーはオープンタイプのものが多いため、オーナーたちはわが子のように可愛がっているに違いない自分の車を、いかに雨に濡らさないか気を使っていた。シートをかけるもの、傘をさしかけるもの、クルマ用のテントを用意するものなど様々だが、いざレースがスタートしてしまえば、ずぶ濡れになっても走らないといけないのがこのレースの辛いところ。
真っ赤な流線型のマセラッティが駐車場に入ってくるとすぐに人だかりができた。クラシックカーレースではお馴染みの顔、堺正章氏のクルマだ。1948年製のマセラッティA6 GCSは徹底的に磨き上げられていて、鳴り響くエンジンの調子もよさそうだ。もちろんここにあるクラシックカーは全てレースに参加するものであるから、当然のごとくチューンナップは万全のものばかり。それでも1920年代から30年代のモデルが40台も出ているわけであるから様々なトラブルは当然のごとく起きる。これまでいくつものクラシックカー・レースを観戦してきたが、スタートと同時にエンジンがかからず、リタイアということもよくある話なのだ。
今回参加してきたクルマの中でも最も歴史の長い一群がシングルナンバーとしてエントリーされている。1923年から1929年までの5台のBUGATTI。クラシックカーレース界ではもうお馴染みの名車たちだ。バイクの様な細いタイヤを、また繊細なホイールを嵌めてたたずむ姿は一級の美術品としか思えない。他にも1926年製の馬車の様な巨体を持つ初代シルバー・ゴーストなど、走っている姿を見ること自体が感動的だ。またイタリア車も数多くエントリーしていたが、1930年代から1950年代のFIATやALFAROMEOは流線型というよりも、より官能的なスタイリングがかえって未来的に思えるほど。何かマシンというよりも動物的な丸みを帯びたデザインに視線が釘付けになる。
Text:Takamasa Wada