彼の作品はイラストレーションと呼ばれることも多々ありますが、それは特に問題としません。CDのアートワークとして落とし込まれたり、Tシャツに映し出したり、その求められたフォーマットの完成形で加減をしていく。それは以前、グラフィックを手掛けていた名残とも言える部分かもしれませんが、全ては最終形を見据えた構成力に長けていた、ということが窺い知れます。
当時、知名度を上げて欲しいと思っていた私は、迷わず大型企画展示に参加してもらい、水森亜土さんとの共作(競作)を企てたときは楽しみで仕方ありませんでした。タイプこそ違えど、絵を描くことで楽しみを与えてくれる者同士。エンターテインメントを口にしていた彼の本領が、少しでも伝わればと思っていました。その後、数多くの展示を一緒に行いましたが、前述のようにいつも閃きを追い求めていました。彼の作業は画材に宿るポテンシャルを、いかに自分の理想的な感覚まで到達させるかであり、その質感が全てなんだと思います。ひとつのモチーフに向かって描ききるのではなく、日々の様々な実験で得た手法を、インプロビゼーションの如く披露していった先にモチーフは存在します。偶然は必然、という言葉も浮かびますが、必然として生まれた“望まれるべき”偶然と言えるのではないでしょうか。突発的に生まれた音楽に近い、五感の作品なんだと思います。