
私が20代を終えようとしている頃に濱口くんとは出会ったのだが、その頃から現在の凄みは備わっていた。というか完成していた。とにかく巧い。写実主義と一見思われがちであるが、それは違う。一貫した濱口健のみが存在している。そして、濃すぎるのだ。
彼の絵は、まさに昭和そのものであり、ぎゅっと濃縮した大きな勘違いである。その大きな勘違いを、理解した上で「くくくっ」と笑い、切り取って、貼り付ける。ヤクザ、宗教、風俗、ファッション、音楽、ゴシップ全てを貼り付ける。コラージュの重なりが、風化して残った後、さらに切り取って、この段階で初めて着色、描写するような時間を感じる。そう、歴史絵のようだ。短くも濃い、そんな歴史絵だ。描かれるモチーフの過去を感じさせる歴史絵だ。とはいえ、濱口本人はただ描いているだけなのかもしれないが。
淡々と絵を描いてきた。動かず、騒がず、顔色も窺わず、自分の興味の範疇を変えることなくしっかりした軸を強化していった。没頭である。時代に乗るのではなく、引いた目線での没頭である。その濃度で描くどの作品にも凄みが備わっているのは、日本人としてのバランス感覚を、どんな構図であれ多用しているからであろう。画力のみならず、構成力もずば抜けている。
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| 『黒、経文、その他』展示 |
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濱口健 展 「黒、経文、その他」 "BLACK, SUTRA, AND THE REST" 会期:2008年5月17日(土)〜7月26日(土) 時間:11:00〜19:00(祝祭日は休み) ※オープンは土曜日のみとなります。 会場:高橋コレクション(神楽坂) 〒162-0812 東京都新宿区西五軒町3-7 ミナト第3ビル3F http://www.takahashi-collection.com/ |