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  そもそも広告制作会社でデザインをされていたことを考えれば、デザイナーとしてのイラスト制作がきっかけだったのだろう。デザインする上でモチーフを自分で描くことができれば、全てのバランスを構築することが可能になる。煙草の「ハイライト」のパッケージデザインは公募で選ばれたそうだが、和田誠デザインの代表格だ。しかし、私にはしっくりこない。やはり、イラストレーションが秀逸なのだ。フリーハンドで描くキャラクターのモダンさや、日本らしさを醸し出した独自のガッシュ使い等、様々なタッチの作品が私を魅了する。絵を描くこと以外の活動は、絵を描くことのために行っているのではないか、と思うほどである。どんな活動をしていても、絵が浮かび、絵を期待してしまう。それが日本におけるイラストレーターの新たな在り方であったように思う。様々な肩書きを要するのではなく、ひとつの活動が浮き彫りになるような作家が、今後も多数生まれてくることを期待しつつ、私は和田誠の最新作品集「表紙はうたう」を眺めながら、ほくそ笑んでいる。

   

  日本におけるイラストレーターという肩書きはイラストを書くことだけではない。私がお会いする方々も職業としてイラストに徹する方は皆無である。映像もやる、WEBも作る、デザインもする等、他の肩書きをも吸収すべく多彩な方々が多い。ただ、どれがメインなのか解らない方々も多数存在する。全ての活動は作品のエッセンスに過ぎず、全く異なる活動をされているのであれば、一度和田誠の活動を分析してみてはいかがだろうか。曖昧な残像では片づけられない存在感、なのに日々の日常にとけ込むバランス感、このある種相反する同居はキャリアだけではない力を感じることができる。

   

  そういえば、奈良美智は「書きたいものしか書かない」というポリシーを貫き、世界的成功を手にした。ここが、イラストレーションとは異なる意味合いが隠されているのだが、その違いに関してはまたいつか。私個人は、どちらも芸術として捉えるようにしています。


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日常、且つ、非日常。 和田誠
和田誠
「週刊文春」カヴァー・イラストレーション『表紙はうたう』
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Agent&Creative company 代表取締役兼プロデューサー。新しい才能に目を向け、プロデュースからディレクションを業務とする。ギャラリーとは異なり展示施設を持たず、人に力を注ぐ業務展開を行い、様々な才能を輩出。作家マネジメント及びプロデュースを手掛けながら、付随する業務を全てこなす。その他に、制作部門を独立させ<diffusion.>の代表も兼任。商業施設、広告等のアートディレクション、デザインも受注し、制作物のプロデュース、プランニングまで手掛ける。 http://www.philspace.com/