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スマートガジェット化する腕時計は、ウェアラブルツールとしての道を歩むか?

篠田哲生プロフィール

 

 今更ながらスマートフォンを購入した。

 

 今まで手を出さなかったのは、どうしても電話としてのインターフェイスに心配があったから。新しく手に入れたスマートフォンは最新機種だが、だからといって使い勝手が特別に良いわけではないだろう。しかしこれはもう慣れることでカバーするしかない。

 

 この悩みは携帯電話に限らない。どの家電でも機能が増えるほど操作は煩雑になり、ユーザーにストレスをもたらす。ちょっとした操作ミスがイライラの原因になってしまうのは、生活を豊かにするはずのデジタルツールには有るまじきことなのだが、現状は上手くいかないものだ。

 

 これは時計業界でも当てはまる。機械式時計の場合、ミニッツリピーターやトゥールビヨンなど複雑な機構を追求するほど時計はセンシティブになり、ちょっとした時刻調整すらも故障の原因になる。当然振動や衝撃にも弱くなるので、腕に着けて使用する時計として成立するのか甚だ疑わしい。

 

 一方、クォーツ式やデジタル式の場合は多機能路線を進み過ぎて、こちらも操作が難しすぎる。機能を呼び出すことができなければ、付加していないも同然。マニュアルを読み込めば操作を理解できるのかもしれないが、直感的に使えないというだけでストレスを感じるほど、現代人は便利に慣れてしまっているだけに、そう簡単にはコトは進まないのである。

 

 そんなことを考えていたら、アメリカから気になるニュースが届いた。 CES2011にてカシオが、Bluetooth Low Energyを利用してスマートフォンを操作する時計を発表した。現状では着信やメール受信をディスプレイ表示する他、着信音やバイブレーションの停止も可能だという。

 

 取材中にうっかり着信音を響かせた経験がある者としては、この機能はかなり嬉しい。ましてやスマートフォンの場合は操作が煩雑なので、着信音を消すつもりで電話に出てしまいかねない。これは二重の嬉しさだ。

 

 カシオはここ数年で明確にスイス勢とは異なる戦略を持ち、時計を“スマートガジェット”と認知している。すなわち、スマートフォンやでジナルカメラに近い存在として考えているのだ。 これは慧眼であろう。

 

 時計は時刻を示す道具だが、“腕”時計はウェアラブルな道具でもある。腕に着けることで便利さを享受できる道具になれば、腕時計を超える価値をユーザー提供できる可能性がある。 機械式時計の歴史や伝統、美しさは普遍的魅力的だが、その一方でスマートガジェットとして生活を便利にするという腕時計の進化があっても何ら不思議はないだろう。

 

 しかし逆説的にとらえれば、スマートフォンひとつ使いこなすにも、周辺機器のサポートが必要だということなのか? かつては最新・最旬のデジタル機器を嬉々として買い揃えていた私も、遂にもうそんな世代になってしまったとのだなあと思うと、それはそれでちょっと寂しいものである。

 

 

スマートガジェット化する腕時計は、ウェアラブルツールとしての道を歩むか?  

アラームやワールドタイムなど、時計としての機能も十分。スマートフォンと連動して自動的に時刻修正する機能も搭載している。しかもコイン電池ひとつで通信を可能にする省エネ仕様のため、面倒な充電作業が不要だ。時計のサイズも縦53.4×横44.4×厚さ12.8mmと実用的。それにしてもこのデザイン…、まさかG-SHOCKとして発売されるか? 2011年内の商品化を目標にしているとのこと。

 

 

スマートガジェット化する腕時計は、ウェアラブルツールとしての道を歩むか?  

このモデルが発表されたのは、ラスベガスで行われた「International Consumer Electronics Show(CES)」。最新の家電やネットワーク技術を紹介するコンベンションで、今までにもプラズマTVやブルーレイディスク、アンドロイド・デバイスなど、現在の主流になっている技術がお披露目になっている。