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時計は世界を救えるか?

篠田哲生プロフィール

 

 東日本大震災からもう4カ月が経過した。いまだ多くの困難が残されているが、それでも徐々に回復の兆しも見えている。時計業界でも徐々に売り上げが戻ってきていると話が聞かれるようになった。

 

 人によっては"移動可能な資産"として高額な時計を購入している人もいるだろうが、先が読めない時代だからこそ、「いつかは○○」と憧れていた時計を、今こそ手に入れようと決断している人も多いようだ。生活必需品ではない贅沢な嗜好品だからこそ、価値観が揺さぶられるほど大きな出来事があると、一種のタリスマン(護符)として時計を手に入れたくなる。これも人間らしい感覚ではなかろうか。

 

 もちろん時計業界も、この機会をビジネスチャンスだと鼻息荒くしているばかりではない。贅沢な嗜好品だからこそ、人をサポートしたい。そう考えるメーカーが多いのは嬉しいことだ。

 

 中でもいち早く被災地へのサポートを表明したのが、オーデマ ピゲだった。このスイスの名門は以前から環境保全活動などに熱心に取り組んできたため、オーデマ ピゲ ジャパンが被災地支援のために「SUPPORT JAPAN」を立ち上げた際には、スイス本社からは、コマーシャルにはせず、中長期的に支援する事を厳命されたという。

 

 オーデマ ピゲ ジャパンが行う「SUPPORT JAPAN」では、手始めに銀座ブティック限定モデルの「ロイヤル オーク オフショア Ginza 7 フォージドカーボン」の売り上げの10%を寄付するという。さらにオーデマ ピゲと関わりの深いセレブリティたちがオリジナルクロックにサインを入れ、チャリティオークションに掛けるという試みも行っている。

 

 しかし何よりも素敵な支援だと思ったのは、被災されたオーデマ ピゲの時計のメンテナンスを今後1年間工賃無償で復旧するということだ。過ぎ去った時間がもう戻らない。しかし愛用していた時計には、共に過ごした時間が詰まっている。時計を修理し、新しい時間を始めたい…。そんな気持ちを代弁しているような、心のこもったサポートだと思う。

 

 未曾有の大災害の前では、高級時計は無力かもしれないが、そこから先に進んで行こうと思った時には、とてつもないパワーを生み出すのかもしれない。高級時計にも世界を救う力があるのだ。

 

 

時計は世界を救えるか?  

7月11日に行われた“Ginza7”のチャリティーパーティ。著名人も多く駆けつけ、会場を盛り上げる。
ゲストDJはVERBAL

 

 

時計は世界を救えるか?  

会場入り口にはサイン入りのクロックを展示。

こちらはリオネル・メッシ(バルセロナ)のクロック。
オークションは8月31日まで行われ、 その状況はhttp://www.audemarspiguet-ginza.jp/supportjapan/clock.htmlで確認できる。

 

 

時計は世界を救えるか?  

銀座ブティックの限定モデル「ロイヤル オーク オフショア Ginza 7 フォージドカーボン」は、
200本のみの生産で、価格は330万7500円。