機械式時計技術講習会に参加
時計業界に従事する人で、修理経験の無い人、機械式時計を覚えたい人向けに行なわれる日本時計輸入協会主催の第13回技術講習会に参加してきました。クオーツの分解やコンプリケーションの解説などもあり、終了時には使用したリストウォッチを手に入れることも出来ます。平日の夜間、毎週2時間半の講習はなかなか根気のいるものだが、販売のプロから業界関係者などが数多く参加している様子。みな熱心に機械式時計の技術者の世界を味わっていました。
時計の販売に関わる人を対象とした機械式時計の技術講習会に参加してきました。工具の使い方に始まり、実際に機械式時計を分解しながら時計の構造や仕組みについて様々な技術と知識を学びます。全部で10回行われる講習会は日本の時計技術者の殆どを生み出している原宿にあるヒコ・みづのジュエリーカレッジにて開催されています。その第一回が9月22日に行われました。講習会の会場に入り、指定される自分の席に着くと、時計部品の傷を確認するキズミや、時計を固定する機会台など、普段あまり見慣れない工具が目の前に並びます。参加者はいかにも業界の方と思しき30代から40代の男性が中心。女性の方も参加していました。機械式時計を分解・組立する細かい作業が果たして自分にできるものかと大変不安でしたが、授業は事前知識のない方でもわかるように非常に丁寧に進められ、ちょっと作業に手間どっている風に見えると、すぐにサポートの教官が横に付いてくれます。まずは目の前に並んでいる工具の種類と手入れ方法から始まります。
まずは時計の手入れに必要な道具の種類から覚える。 |
必要な道具を事前に準備して講習に臨みます。 |
さらに細かい道具が講習会場には用意されていました。 |
最初に時計を扱う上で不可欠な工具、ドライバーとピンセットの手入れ方法について説明を受けました。先端形状がドライバーやピンセットにおいては大変大切であること、どんな種類と形状があることなどを学びました。ほんのちょっとしたことでピンセットの開きを調整する方法などを聞くと、何か時計職人の世界を垣間見た気にさせてくれました。
そしていよいよ実際にケースに入れられた機械式時計の本体を取り出すことになります。左手に指サックをはめて慎重にケースから取り出し、機械台に固定します。これはスイス製機械式時計ETA6497を使用し、講習会終了時に、ケースに入れ、ストラップを付けて持ち帰ることのできるものです。機械台に固定してキズミを使って動作を確認していると、次第にそのマクロの世界に引き込まれていきます。次にその機械台を歩度測定器、ウォッチエキスパートに固定しての授業に進みました。
初めて見るウォッチエキスパートなる機械。それを扱う前に機械式時計を理解する上での用語について理解しないとなりません。ウォッチエキスパートは「歩度測定器」であり、「歩度」とは単位時間あたりの時計の進みや遅れを24時間に換算したもの。時計の精度を測るものです。この他に、時計の精度を左右する振動数などを計測してくれます。
機械式時計は様々な要因、歯車の噛み合いや、ゼンマイのトルク(力)の変動、温度変化、腕の動きや衝撃などによって周期が狂います。それらを調整することで機械式時計は精度を保つのだということを教わりました。ウォッチエキスパートはその機械式時計の状態を数値化、グラフによって表してくれるものです。機械式時計がどうやってその精度を保つかという構造的な解説を受けた後に、いよいよウォッチエキスパートにつなげた状態で精度調整の実習に入ります。キズミで位置を確認しながら、慎重に緩急針を移動させる歩度調整を行います。するとウォッチエキスパートの「歩度」とグラフの数値が一気に変化していきます。「ああこうやって時計職人の方々は精度を調整しているんだなあ」と知らなかった世界を、ほんの入り口だけですが、堪能させていただきました。
機械台に時計を慎重に固定して作業は進みます。 |
ウォッチエキスパートをつなげるとグラフが作動します。 |
ウォッチエキスパートをつなげるとグラフが作動します。 |
この講習会は9月~12月に渡って、10回の講習が行われ、この後は実際に時計を分解、組み立ての作業を行い、その構造をさらに理解していきます。さらに洗浄の方法、注油などの実習など、最終的に機械式時計を完成させるまでに至ります。最終的に、クオーツ時計の分解、組み立て、クロノグラフ機構についてなどの講習を受けると、時計の機構に関する一通りの知識を手に入れ、実習で使用した機械式時計を持ち帰ることが出来ます。
この講習会で修了証を手に入れた方は日本時計輸入協会の定めるウオッチコーディネーター資格検定の実技実習が免除されるという特典もあります。現在販売員をされている方、より深い機械式時計の知識を手に入れたいという業界の方々にとってはもちろん、時計文化の継承・発展に寄与する、大変有意義な講習会となっていると感じました。
主催:(一社)日本時計輸入協会 実施:ヒコ・みづのジュエリーカレッジ
Photo&Text Takamasa wada