3月17日から25日まで、スイス北部の都市バーゼルにて開催されたバーゼル・ワールド。
未だ金融不安の影響が残る中、“世界最大の時計と宝飾の展示会”という肩書にふさわしいイベントだったのか?
超私的“○(マル)と×(バツ)”で振りかえってみましょう。
まずは○(マル)。
これは何と言っても『時計業界にも価格競争の波が訪れた』ということでしょう。ここ数年の時計バブルでは「高価で希少価値の高い方が時計が売れる」という悪魔の囁きに負けて、どのブランドも高額モデルに走りました。
しかしその時計を買うべき客層が霧散した今、価格と品質のバランスが整っていなければ売れることはありません。SIHHでも戦略的価格帯のモデルがいくつも登場しましたが、バーゼル・ワールド勢はさらにその先を進んできました。ブライトリングはハイスペックダイバーズ「スーパーオーシャン2」が20万円台。そしてタグ・ホイヤーは自社クロノグラフCal.1886をカレラに搭載して40万円台前半に収めます。
その他のブランドでも「価格でも勝負しています」という声が多く聞かれており、時計を購入するには良い時代が来そうです。
次は『日本ブランドへの注目』。時計不況の中、世界中でシェアを伸ばしているのがG-SHOCK。世界に誇れるメイド イン ジャパンの代表ですが、この時計がアメリカで再び人気を集めており、ストリートカルチャーの一部としてパリ、ロンドン、バルセロナなどに飛び火中なのだとか。台湾、香港がきっかけとなり中国本土でもかなり知名度が上がっており、世界中にG-SHOCKを持つ若者があふれかえる事も予想できます。
当然ブース内も熱気に包まれており、活発な商談が繰り広げられていました。
またシチズンは昨年発表したコンセプトウォッチ「エコ・ドライブ ドーム」が完成。さらに新しい2つのコンセプトウォッチも発表され、来年への期待感が高まります。
そして『天気が良かった!』こともうれしい誤算。出発直前までのバーゼルの気温は最高0度という予報。ただでさえ過酷な取材がさらに辛くなることを覚悟していました。ところがいざ現地に到着すると、拍子抜けするほどのポカポカ陽気。最終日はスタッフとともに、屋外でジャスを聞きながらビールを堪能できました。
では次は×。
今年のバーゼル・ワールドでは、時計に対する不満点はほとんどありませんでした。
しかしながら『時計価格への不信感』が募りそう。というのもあまりの販売不振に恐れをなして価格を見直した結果、ブランド価値まで暴落しかねない状況を招いているのです。
昨年まで100万円超の時計を連発してラグジュアリー感を謳っていたブランドが、今年は戦略を一変させ30万円台のお値打ちモデルを揃えてくるというのは、ブランドとしての正統性を傷つけかねません。
スイスの時計ブランドにとって、最も大切なのは「歴史と伝統の継続」のはず。コロコロとその立ち位置を変化させてしまうのは、自社の時計自体も否定することにもつながります。
そしてブランド側の迷走は、ユーザーにも影響を与えます。特に新作と旧作の価格差は大きな混乱を招くでしょう。
「適正価格とは何か?」という目線がより求められる時代になってきたため、ブランドのヒストリーや時計のディテールには、今まで以上に目を向ける必要がありそうです。
青空が広がるバーゼル。地元の人は皆軽装ですが、取材陣は気候変化を読み切れず、厚着で汗だくです。 |
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新技術も登場。タグ・ホイヤーではヒゲゼンマイに代わりに磁力を使用する「PENDULUM」を開発。コンセプトモデルに搭載しました。 |
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バーゼル・ワールド名物のジャズタイム。仕事モードを切り替える心地よいリズムの中でビールがすすみます。 |
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