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アスリートの最高のパフォーマンスを最大の興奮に変える「計時」というスパイス

篠田哲生プロフィール

 

 バンクーバーオリンピックを、現地で観戦する機会に恵まれました。

 

 オリンピックの公式計時は1932年のロサンゼルスオリンピック以降、そのほとんどの大会でオメガが担当しています。そして彼らの仕事が、スポーツにより深みを与えるスパイスのようなものだと実感させられる経験になりました。

 

 そもそも「スポーツ計時」という概念はいつから始まったのでしょうか?

 

 一説によると19世紀まで遡るようです。それまでのスポーツはあくまでもレクリエーションの延長でしたが、ルールを定めることで、同条件での真剣勝負ができるようになります。これが近代スポーツの起源だそうです。

 

 そして1820年ごろにはストップウォッチでの「スポーツ計時」が行われるようになりました。タイムを計測すれば、目の前で競い合っている相手だけではなく、他の地域の強豪や過去の自分との競争も可能でしょう。つまりスポーツ計時のおかげで、競技自体の魅力がぐっと高まったのです。

 

 第一回近代オリンピックは1896年にアテネで開催されました。その背景にはスポーツ計時によって高まった「世界中と勝負したい」という競技者の思いがあったのかもしれません。

 

 現在では競技者のレベルが進化しており、それに対応するようにスポーツ計時も驚くほどの進化を遂げています。

 

 オメガがバンクーバーオリンピックに持ち込んだ新技術の中で、我々に縁が深かったものといえば、まずはスピードスケートにて使用された「オメガ フラッシュガン」でしょう。スタートの合図を音と光で知らせ、しかも同時にタイム計測も始めるため、ミスが生じにくいのが特徴です。これはコンマ数秒で勝負が決まるレースには欠かせません。

 

 さらにフィギュアスケートでは、専用カメラで撮影した映像をジャッジ席のモニタに映す「高解像度判定スコアリングシステム」も導入しました。このシステムのポイントは、モニタを操作するだけで見たいシーンを、簡単に再生できる点にあります。しかも巻き戻しやスロー、コマ送りも自由自在。着氷時のズレや回転不足などの減点対象も、記憶に頼ることなく正確にジャッジできるようになりました。

 

 このような技術的進化によって競技の正確性が高まり、女子団体追い抜き(パシュート)決勝のような“0.02秒差のドラマ”が生まれるのです。

 

 ではスポーツ計時の未来はどうなるのでしょうか? バンクーバーに居合わせたオメガの公式計時の最高責任者クリストフ・ベルソー氏は、この質問に対してこう答えてくれた。

 

 「スポーツ計時の進化は競技場内に留まりません。むしろテレビ観戦のための技術がもっと向上することでしょう。例えばGPS機能を使えば選手の位置やタイム差を瞬時に計測できる。これは解説者に様々な情報を与えるということですから、マラソンやクロスカントリースキーのような長距離競技でも、飽きずに観戦できるでしょう。またボート競技では心拍数やストロークレートも表示することで、選手の状態も把握できます。このような様々な技術を積み重ねていくことで、スポーツはもっと魅力的になるのです」

 

 オメガでは次回の2012年のロンドンオリンピックのみならず、2020年までのオリンピック公式計時を担当します。今後はどのような計時技術で、我々の興奮を盛り上げてくれるでしょうか? そんな視点でオリンピックを語るのも面白いかもしれません。

 

アスリートの最高のパフォーマンスを最大の興奮に変える「計時」というスパイス  

約1年の開発期間を経て完成した新装置「オメガ フラッシュガン」。スターターが引き金を引くと、音、フラッシュ、計時が同時に行われるというもの。デザインも美しい。

  アスリートの最高のパフォーマンスを最大の興奮に変える「計時」というスパイス  

ファイナルラップを知らせる鐘にもオメガのロゴが。

 

 

アスリートの最高のパフォーマンスを最大の興奮に変える「計時」というスパイス  

こちらが「高解像度判定スコアリングシステム」。タッチモニタ式なので、右側のカラー部分を押すだけでスロー再生などの操作が簡単にできる。

  アスリートの最高のパフォーマンスを最大の興奮に変える「計時」というスパイス  

スキージャンプの会場で計測を行うオメガタイミングチーム。ミスが許されない状況下だからこそ、オメガの技術力と信頼性が評価されている。