TOP > Watch > 時計 コンシェルジュ 篠田哲生 > ジュネーブの時計フェアで感じた“超私的”○(マル)と×(バツ)

ジュネーブの時計フェアで感じた“超私的”○(マル)と×(バツ)

篠田哲生プロフィール

 

ジュネーブの時計フェアで感じた“超私的”○(マル)と×(バツ)

 先日終了したジュネーブの時計フェアでは、様々な新作時計が発表されました。その詳細に関しては姉妹サイト「グレッシブ(http://www.gressive.jp/)」にて紹介しますので、今回は現地で感じた“○”と“×”について書き連ねていきましょう。

 

 “○”はグッドプライス&グッドデザインのモデルが多かったこと。

 

 昨年のスイス時計産業の輸出額が26%も減少したという現状もあってか、より販売力に重点を置いたモデルが目立ちました。その一例がロジェ・デュブイ「イージーダイバー」。価格は132万3000円となり、かなり値ごろ感があります。価格が下がった理由は金無垢ローターを廃止し、ベゼルをシンプルにしたこと。時計自体の実力と魅力は全く低下していないため、気持ちよく薦めることができます。

 

 さらに時計の町ジュネーブの全体が盛り上がっていたのも好印象。SIHHにはグルーベル・フォーシィーとリシャール・ミルが追加され総ブランド数は19へと拡大。さらに市内の別会場ではアントワーヌ・プレジウソら実力派ブランドによるエキシビション「GTE(Geneva Time Exhibition)」も開催されました。もちろんWPHHも健在です。

 

 そして、リリース時期に戦略が見えてきたのも好感。例えばオーデマ ピゲ「ロイヤル オーク オフショア グランプリ クロノグラフ」は、F1レースをイメージしたモデルのため、F1開幕戦のバーレーンGP(3月14日)に合わせての発売を予定。さらにIWC「ポルトギーゼ ヨットクラブ クロノグラフ」は、マリンシーズンを見越して6月発売を予定しています。

 いつまで待っても新作が入荷せず、買い気分が削がれるという間抜けな状況が避けられるのは、メーカーにもユーザーにもメリットとなるでしょう。

 

 しかしながら好事魔多し。当然ながら眉をひそめるべき“×”な事態もありました。

 

 まず挙げたいのが治安の悪化。ヨーロッパでの景気悪化は日本の比ではなく、失業率もかなり高い。そのせいでジュネーブ市内は犯罪が急増しており、夜の外出もためらうほど。

 

 旧市街の高級ブティックやプライベートバンクのショーウィンドウは破壊され、美しい街並みに不穏な空気に包まれていました。

 

 また数年間の話題の中心だった「超複雑系突飛モデル」がほとんど見られなかったのも残念なこと。そればかりでは困るが、ないのも寂しいというのは贅沢な我儘でしょうか。

 

 そして最後の“×”は一月開催のため“旬の味”を楽しめないということ。過酷な取材の疲れを癒すのは、おいしい食事と相場が決まっています。今までは春開催だったため、ホワイトアスパラガスが旬を迎えていたのですが、1月開催になってからはトンとご無沙汰。寂しい限りです。

 

 さて3月中旬からはバーゼル・ワールドが開催されます。今度はどんな“○”と“×”に出会えるのでしょうか。

 

 

ジュネーブの時計フェアで感じた“超私的”○(マル)と×(バツ)  

日本からのリクエストが結実して生まれた“リーズナブル”なイージーダイバー。とはいえ迫力あるルックスは健在。ロジェ・デュブイの入門編となりそう。世界限定888本で、価格は132万3000円。

 

 

ジュネーブの時計フェアで感じた“超私的”○(マル)と×(バツ)  

ローヌ川沿いは、高級ブティックや高級ホテルが立ち並ぶラグジュアリーエリア。しかしショーウィンドゥは破壊され、見るも無残な状態に。数年ジュネーブに通っていますが初めての経験です。