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落ち葉の季節と共に冬の時計について考えてみる

篠田哲生プロフィール

 

 以前、夏の時計ということでカシオ「G-SHOCK」を推薦したので、今回は「冬の時計」について考えてみたい。冬の時計に求められる要素とは何だろうか?

 

 冬らしいシチュエーションから考えてみたところ、ひとつの結論に達しました。答えは「しみじみとした雰囲気」なんです。

 

 寒風吹きすさぶ街かどでふと見上げた街路樹は、もう葉が散ってしまった…。気が付けはもう日が傾き、自分の後ろには長い影が伸びている…。そんなおセンチな雰囲気に、タフなダイバーズウォッチが似合わないのはご理解いただけるでしょう。

 

 ではしみじみとした時計とは何か。まず大切なのはケース素材。冬の傾きかけた赤い夕陽に映えるのは、同様に美しい赤みを持つピンクゴールド。ギラギラ照りつける夏の日差しにはクールなSSやチタンなどが似合いますが、冬にはピンクゴールドの優しい温かみが、心にぐぅーっと沁みるのです。

 

 特殊機構も冬の時計には不要でしょう。アクティブに楽しみたい夏ならいざ知らず、寒い冬は基本にインドアがメイン。特別な防水性能もクロノグラフも不要となり、シンプルな機構とシンプルなインデックス&ダイアルで十分です。冬に食べる湯豆腐がしみじみ美味しいように、冬こそ端正なドレスウォッチの滋味深さをしみじみと味わうべきなのです。

 

 

 

落ち葉の季節と共に冬の時計について考えてみる   ピアジェ アルティプラノ
ピアジェが得意とする薄型ムーブメント、キャリバー838Pを搭載したドレスウォッチ。10時位置にスモールセコンドを配置するという独自性も、自社ムーブメントならではの楽しみ。インデックスもシンプルに徹しているが、ケース径が40mmもあるのでクラシカルになりすぎないバランスを持っている。
手巻き、18KPGケース、ケース径40㎜。157万5000円

 

 

 最後はムーブメント。冬は背中を丸めて手はポケットの中、という姿勢になりがち。となると自動巻きでは効果を発揮しにくい(こじつけか?)。一方手巻きムーブメントの場合、凍える手でカリカリとリューズを巻き上げる行為は、しみじみとした気分が盛り上がります。

 

 もう故郷は雪が降っているかな…、なんて考えながらカリカリ。レマン湖の白鳥は元気かな…なんて空を見つめてカリカリ。かじかんだ手にはーっと息を吹きかけるまでが一連の行為なので、なるべく屋外でやってください。

 

 

落ち葉の季節と共に冬の時計について考えてみる   ピアジェ アルティプラノ ムーブメントの厚みはわずか2.5mm。大きなブルースチールねじや人工ルビーの穴石が、美的アクセントになっている。これだけの薄型ケースであり、香箱も一つにもかかわらず、パワーリザーブは約62時間を実現。ここにもピアジェの技術力がさり気なく投影されている。

 

 

 こうやって「冬の時計」に必要なしみじみ条件を列挙しましたが、ではどの時計がいいのか? ピアジェ「アルティプラノ」はいかがでしょう。

 

 ノンデイトのシンプルな機構をもち、薄型のピンクゴールドケースに収まるのは、当然手巻き式の自社製ムーブメント。際立つ主張は敢えてしませんが、落着きのある時計には超一流のオーラがあります。

 

 凍える季節に派手さは不要。しみじみと味わえる高級時計こそ、冬の時計に求められる要素なのです。