TOP > Watch > 時計 コンシェルジュ 篠田哲生 > あれば必ず役に立つ時計鑑賞のための道具

あれば必ず役に立つ時計鑑賞のための道具

篠田哲生プロフィール

 

 あなたは時計を何で見ていますか?

 

 ディテール自慢のダイアルや精緻な仕上げのムーブメントをじっくり鑑賞するなら、やはりプロも愛用する道具「キズミ」を使いたい。キズミとは時計師が使用する「ルーペ」のことで、焦点距離がかなり短いので、時計にかぶりついているように見える。その姿がいかにもプロっぽく見える小道具です。

 

 

スポーツの秋、到来! だからこそ、ニッチなスポーツウォッチのススメ   愛用中の4つのキズミ。倍実が異なるキズミを揃えることで、様々な部位の鑑賞に役立てる。

 

 

 私が愛用しているキズミは全部で4つ。それぞれに倍率が異なりますが、一番使い勝手が良いのはローズウッド製。肌当たりが柔らかいのが特徴です。ベダ&カンパニーのアルミ製キズミは、バーゼル・ワールドに取材に行った際にもらったお土産で、その他は定番のプラスチック製です。

 

 キズミ本体に開いているのは空気穴。長時間の作業によってレンズが曇ることを避けるためのテクニックで、これは時計学校で教わりました。熟練職人になるとこの穴から対象物を裸眼で覗いて、作業を進めるとのこと。いちいちキズミを目から外す必要がないため、スピーティーに仕事が進むそうです。

 

 

あれば必ず役に立つ時計鑑賞のための道具    キズミから覗いた世界はこんな様子。顕微鏡のように超拡大されるわけではないのだ。 これこそがプロの目の前に広がる世界なのだ。   あれば必ず役に立つ時計鑑賞のための道具    空気穴はドリルやキリで開ける。ひとつ穴派とふたつ穴派に分かれる。

 

 

 ちなみにキズミを目の位置に固定するためのツルは、私のような素人は頭に引っ掛けるような汎用品を使いますが、スイスで取材した際に確認すると、ほとんどの人が太い針金で自作した片耳ツルのタイプを使用しています。さらにベテラン職人ともなると、ツルを使わず直接キズミを目の位置に挟み込みます。これは欧米人特有の彫りの深い顔立ちだから可能なスタイルですが、そのおかげで、作業中の表情は何とも気難しそうに見えます。

 

 時計職人=気難しい頑固者。というイメージがありますが、話してみるとみんないい人ばかり。実はこのイメージは、キズミを挟んでいる時の表情に影響されているだけかもしれません。

 

 時計をもっと楽しむためのキズミは「五十君商店http://www.igimi.co.jp/」のような時計工具専門店だけでなく、東急ハンズなどでも取り扱っているので、ぜひチャレンジしてください。肉眼では気がつかなかった、新しい発見があるかもしれません。