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独立時計師フィリップ・デュフォー氏のアトリエを表敬訪問

篠田哲生プロフィール

 

  先日までスイスへ出張していましたが、その際にスケジュールに余裕があったので、独立時計師フィリップ・デュフォー氏のアトリエを訪問してきました。

 

  彼のアトリエは“ウォッチバレー”と呼ばれるジュウ渓谷にあります。まずはジュウ湖の見えるレストランで待ち合わせ。湖名産のマス料理を食べながら雑談です(と言ってもフランス語は全く持って不明なので、通訳を介してですが)。“孤高の独立時計師”と評されることの多いデュフォー氏ですが、実際に話してみると冗談好きの気のいいおじさんといった印象でした。

 

  彼のアトリエはそこから車(愛車はレクサスRX)で10分ほど。長閑な牧草地が広がる場所に建っており、かつて学校だった建物を改装して使っています。

 

  中に招かれると、そこかしこに古い工作機械が並び、作業机の上には組み立て中の「シンプリシティ」が。彼はこのアトリエで小さな歯車さえも自作しており、ジュウ渓谷に伝わる伝統的な手法で時計を作っているのです。その本数は年産20本とも言われ、既に生産予定本数を完売。現在はその注文に合わせて、時計をコツコツと作り上げているところでした。

 

  ビッグメゾンが作る時計はトレンドや最新技術が投影される刺激的な存在ですが、その一方で職人自らが作り上げるハンドメイドウォッチの持っている味わいも捨てがたい。この両面こそが自動車など他のプロダクトとは決定的に異なる“機械式時計の魅力”になるのでしょう。

 

  職人魂にふれることで、より時計産業の文化や歴史に深い興味が湧いた、実のある訪問となりました。

 

 

独立時計師フィリップ・デュフォー氏のアトリエを表敬訪問   アトリエの建物は小ぢんまりとしてかわいらしい印象。デュフォー氏はその入り口で笑顔満点。   独立時計師フィリップ・デュフォー氏のアトリエを表敬訪問   アトリエ入り口の看板。Horlogerie compliquéeとは、複雑時計の意味だ。

 

 

独立時計師フィリップ・デュフォー氏のアトリエを表敬訪問  

パーツまで自作するために様々な工作機械が並んでいる。これらはかなり年季が入っており、彼の長いキャリアを示している。

  独立時計師フィリップ・デュフォー氏のアトリエを表敬訪問  

組立途中のシンプリシティ。大きなブリッジは丁寧に面取り加工を施しており、キラキラと美しく輝く。

 

 

独立時計師フィリップ・デュフォー氏のアトリエを表敬訪問  

様々な道具が整然と並ぶ作業机。大きな窓に面しており自然光の下で作業するのが鉄則。