TOP > Watch > 時計 コンシェルジュ 篠田哲生 > タグ・ホイヤー 「モナコ V4」との邂逅で、久々の感動体験

タグ・ホイヤー 「モナコ V4」との邂逅で、久々の感動体験

篠田哲生プロフィール

 

  メディアの仕事にかかわっていると、刺激の強い日常のためか、徐々に感動し難くなってくる。特に時計の場合、年に数百本と目にするので、例え人気の高いモデルであっても、“この時計のデザインはアレとコレのミックス”とか“この機構は2年前の焼き直し”だの、悪気はなくても粗が見えてくる。早い話、時計不感症になってしまうんです。

 

  しかし今回だけは違いました。見た瞬間に「おぉー」という感動のため息が洩れたのは、世界初のベルトドライブ式ウォッチ、タグ・ホイヤー「モナコ V4」に対して。

 

 

  この時計は2004年にコンセプトウォッチとして発表されました。歯車とピニオンの代わりにベルトを使って動力を伝達するという画期的な機構は確かに魅力的でしたが、あまりにも革命的過ぎるコンセプトのため、誰もが(それって実現するの?)という印象しかもてなかったのも事実。しかしタグ・ホイヤーでは5年の歳月をかけて研究開発を進め、見事に完成させてしまった。

 

  そして何よりも感心したのが、この時計が実用的だということ。

 

  時計業界では話題狙いの突飛で革新的な機構は少なくありませんが、複雑さを求めるあまり無理な設計が祟って故障が多かったり、精度が低かったりと、何かと問題が発生するのが定説。

 

  ところがモナコ V4の場合、確かに革命的な機構を持っていますが、2針+スモールセコンドという構成は極めてベーシックなスタイルのため、時計の設計自体に無理がない。そしてバイクも日曜大工も全く問題ないというほど耐久性・耐衝撃性が高く、精度もクロノメーター級なのだとか。

 

  ちなみにクロノメーター認定を取得できないのは、クロノメーター基準の中にある“文字盤が必要”(→モナコ V4はムーブメントがそのまま文字盤)、“回転ローターが必要”(→モナコ V4は上下運動する線形ローター)という要素を満たせないから。つまり、あまりにも革命的なため、制度が追い付かないというのが実情なのです。

 

  気になる発売時期は11月から。まずは限定150本のみのプラチナモデルから発売が開始されますが、これだけの“感動作”ですから、即完売は必至でしょう。

 

タグ・ホイヤー 「モナコ V4」との邂逅で、久々の感動体験   コンセプトモデルから多少デザインが変更したものの、8時位置にある脱進機周辺がよく見えるようになり、医療用素材をベースに開発したベルト(太さは髪の毛レベル)によって力が伝わる様子を鑑賞できる設計になっている。なお、ベルトドライブにしたことによるメリットとしては、歯車同士を組み合わせる必要がないため、レイアウトが自由だということ。そして力の伝達効率が優れていることが挙げられる。

タグ・ホイヤー モナコ V4
自動巻き、PTケース、ケースサイズ縦49.4×横40.5㎜、52時間のパワーリザーブ、4時位置にスモールセコンド。世界限定150本(ただしNo.1はチャリティーオークションに出品済)。840万円。

LVMH ウォッチ・ジュエリー ジャパン タグ・ホイヤー ディヴィジョン 03-3613-3951
タグ・ホイヤー 「モナコ V4」との邂逅で、久々の感動体験   見よ! この立体感。機構が革命的ならデザインも革命的。仕上げも美しく、食い入るように見つめてしまう。
タグ・ホイヤー 「モナコ V4」との邂逅で、久々の感動体験   中央にあるロゴ付きの金属が、タングステン製の線形ローター。そして4つの香箱の間にもベルトが通っており、動力を伝える仕組みになっている。