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これもTPOのこだわり。夏には夏のレザーストラップを。

篠田哲生プロフィール

 

  夏のレザーストラップはかわいそうだ。汗にぬれ、雨にぬれ、湿気を孕んで崩壊寸前。おまけに悪臭を放ち、誰からも蔑まれる存在…とは言いすぎかもしれないが、とにかく年々亜熱帯化する日本の夏に、レザーストラップは残念ながら不向き。時計メーカーサイドもその辺は重々承知しており、日本のユーザー用として、ドレスウォッチであってもメタルブレスレットのモデルを追加するほどです。

 

  時計を複数所有するのであれば、季節ごとにメタルブレスモデルとレザーストラップモデルを使い分けることもできるでしょう。しかし一本のみで通年使うと考えると、結局メタルブレスを選ばざるを得なくなります。これでは時計選びの楽しさが半減してしまうし、スイス時計の伝統を受け継ぐ端正で美しいドレスウォッチを選ぶことができなくなる…。これはあまりにも残念ですよね。

 

  そこで時計愛好家なら「夏用のレザーストラップ」を作ることをおススメします。“夏用”とはつまり水分に強いということ。これなら夏の盛りであっても無理なくドレスウォッチも楽しめます。

 

  もちろん一方的に押しつけるのは失礼なので、早速実践してきました。ストラップブランドは現地取材の経験もあるフランス・ブザンソンの「ジャン・ルソー」。東京・表参道にある「ISHIDA青山表参道」にインショップがあるので、そこに出向いてカウンセリングを行いながらストラップの仕様を決めていきます。

 

  まずは革の素材。水棲生物の方が水に強いといわれることもありますが、死んでしまえば皆同じらしい。ただしアリゲーターやリザードのように鱗状の斑紋を持つ革の場合、時計の着脱の際の曲げ伸ばしで革を傷めやすく、結果として水にも弱くなるとか。そこで一枚表皮のシャークスキンを選択。表面はツルリとしており汚れにくそう。色は夏を意識して爽やかなホワイトにしました。

 

  裏地はこだわりを楽しめる部分ではありますが、今回のコンセプトはあくまでも耐水を意識した夏用ストラップ。そこでアンチ・スウェットと呼ばれる合成皮革で無難にまとめます。さらに汗が染み込まないように、革を縫い合わせてからアンチ・スウェット革を貼りつけて、裏面にステッチが露出しないようにするひと工夫を加えます。そして、ストラップに開ける穴は2つ。一つはジャストサイズの普段用の穴で、もう一つは汗ばむ陽気の際に緩めて通気性を高める穴。こんなさりげない小技を効かせられるのもオーダーメイドの特権です。

 

  腕時計は買ったら終わりではありません。少しずつ手を加えることで、自分だけのオリジナリティを追求するのも楽しみ方の一つ。ストラップは最も手を出しやすい部分ですから、夏というマイナス要素を利用して、時計をもっと楽しんでみましょう。

 

 

これもTPOのこだわり。夏には夏のレザーストラップを。   これもTPOのこだわり。夏には夏のレザーストラップを。

 

  今回、夏用ストラップを装着したのは、ジャガー・ルクルト「レベルソ・グランド・デイト」。製品にはブラウンのクロコダイルストラップが装着されるが、ホワイトのシャークストラップなら、カジュアルスタイルでも楽しめる雰囲気に。裏側はステッチが見えないようにして、耐汗性を高める。ちなみに価格はオーダー料を含めて2万1000円。

 


これもTPOのこだわり。夏には夏のレザーストラップを。   小さなケースにビッグデイトと8日間のパワーリザーブを搭載。端正なアールデコデザインを持つレベルソの人気モデル。反転させるとシースルーバックになっており、自社製のCal.875を鑑賞可能。手巻き、SSケース、ケースサイズ縦46.5×横29.25mm。110万2500円

 

 

ジャガー・ルクルト
03-3288-6370