夏のビーチは危険がいっぱい。もちろん時計の話です。

 

　 特に危険なのが海水。聞くところによれば、サービスセンターに持ち込まれる故障の多くがリューズ部分から侵入した水による錆び。こうなると部品交換が必要となり、時間も金額もかかってしまうのです。 その為、多くの人がビーチに持っていく時計として耐水性能の高いモデルを選ぶことでしょう。しかしここには大きな罠が隠されています。

 

　 耐水時計にはダイアルに数字が書かれています。しかしその数値が単純にスペックを表しているわけではありません。日本工業標準調査会（JIS）が定めたガイドラインでは、耐水性能を持つ時計には「防水時計」と「潜水時計」の二種類があり、更にそれぞれが性能に応じて1種／２種で分かれている。つまり4つのスペックカテゴリーが存在するのです。

 

　 最も高性能なのが「２種潜水時計」。これは200m～1000mまでの潜水が可能で、飽和潜水にも対応するプロスペックモデル。次に性能が高いのが「１種潜水時計」で、100m～200mまでのスクーバダイビングが可能な一般ユーザー向けモデルになります。

 

　 これらのカテゴリーに属する時計が“ダイバーズウォッチ”と呼ばれるのですが、単なる防水性能だけでなく、判読性、耐磁性、耐衝撃性、耐塩水性なども保持していなくてはならず、さらに数値が書かれた逆回転防止ベゼルも必須。これはタイムプリセレクティング装置と呼ばれています。

 

　 しかし世の中にはダイアル上に200mと書いてあるのに逆回転防止ベゼルを持たない時計がある。これが「防水時計」と呼ばれるジャンルです。

 

　 防水時計にも2つのクラスがあり、日常生活用防水と呼ばれる「１種防水時計」が３気圧防水で、「２種防水時計」が日常生活“強化”防水となり、５気圧～２０気圧に対応します。

 

　 ３気圧防水の場合、雨や洗顔程度の水しぶきにしか対応できません。そしていくら“強化”であっても５気圧防水レベルなら、ビーチへの持参は自殺行為です。５気圧防水＝５０m防水だと勘違いしている人も多いでしょうけど（僕もそのうちの一人でしたが）、水中で時計を付けた腕を動かせば、それだけで水圧がドーンとかかってしまうのです。

 

　 １０気圧～２０気圧防水であれば、素潜り程度なら問題はないでしょうけど、それでもケースには耐塩水性能がないので必ず水洗いをすること。しかもその場合も蛇口からほとばしる水を直接当ててはダメ。水道水には強い水圧がかかっているので、それだけで防水レベルを超えてしまう恐れがあるのです。

 

　 いくら机上のスペックでは問題がなくとも、目に見えない作りや素材面などで、防水時計と潜水時計は全く別モノだという驚愕の事実が判明したと同時に、僕が普段ビーチで使用している時計が「２種防水時計」だったことも判明。つい先日もハワイで無茶させてきただけに、かなり後悔しています……。

 

　 そう考えると、やはり安心してビーチに持ち出せる時計というのは、専用時計として考案されたダイバーズウォッチということになるのでしょう。結局、餅は餅屋なのです。

 

 

 

　 潜水／防水の規格を明確にしているのがセイコー。そもそも、JISの基準自体がセイコーで制定していた独自基準がベースになっているのだ。ちなみに国際標準化機構（ISO）が定めるダイバーズウォッチ基準は、JIS規格がベースとなっているだけに、セイコー基準がそのまま世界基準だと言えるだろう。

 

　 今回は日常生活強化防水（20気圧防水）のGMTモデル「グランドセイコー SBGE001」（上）と200m潜水用防水を備えるダイバーズウォッチ「グランドセイコー SBGA029」（下）をピックアップ。

 

　 素人目には「20気圧防水＝200m防水」と映るため、耐水性に関しては同スペックに見えてしまうが、その実、その実力は全く異なる。それにしてもGMTモデルでありながら20気圧もの防水性能を備えているというのは非常に心強い。ビーチで使用しないとしても、水に関する様々な局面で使用することを考えると、嬉しい配慮だ。

 

SEIKO　GRAND SEIKO グランドセイコー SBGE001 回転ベゼルには24時間式のインデックスが入り、赤針と組み合わせることで任意の都市の現在時刻がすぐに判読できるGMTモデル。4時位置にリューズを配置するデザインは、グランドセイコーとしては約40年ぶりに採用された。ねじ込み式リューズを採用し、防水性能は20気圧。これは日常生活強化防水に当たる。自動巻き式スプリングドライブ、ＳＳケース、ケース径43.5㎜。57万7500円

SEIKO　GRAND SEIKO グランドセイコー SBGA029 独自機構であるスプリングドライブを搭載したグランドセイコー初の本格ダイバーズウォッチ。防水性能は200m。潜水時計の必須スペックである逆回転防止ベゼルは、この部分のみ交換ができる構造になっているので、万が一ベゼルに不備が生じてもすぐに直せる。このメンテナンス性の高さもセイコーらしい心配りだ。自動巻き式スプリングドライブ、SSケース、ケース径44.2mm。59万8500円

 

 

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