仕事柄、取材・撮影や発表会などで、新作時計に触れる機会が多いのですが、だからと言ってそのモデルのすべてを理解したかと聞かれれば、首を横に振らざるを得ない。
せいぜい腕にはめる程度が関の山。撮影用サンプルはモックアップの場合もあるので、クロノグラフなどの機構を動かすことすらできない場合が多いのだ。ましてやミニッツリピーターなどは、可動禁止が原則なので「音質の良さ」を確認することもできない。
こうなってしまうと、リアルな論評を書くことは難しくなってしまう。時計の魅力を伝える際に、やはり自身が触れた上での実感を書き添えた方が読者にも伝わるのは間違いありません。そのため、なるべくメーカーに顔を出して動く時計を触らせてもらい、また、客のふりをして時計店を梯子することもしばしばです。
そんな折、とある男性ファッション誌から電話がかかってきました。「ジラール・ペルゴのww.tcファイナンシャルパワーリザーブを1週間だけモニターして欲しい」というのです。
ジラール・ペルゴ曰く「当社の時計の魅力は、実は腕にはめることでより実感できます。そのため、店頭では必ず腕にはめてもらって、ラグデザインの巧みさやケースサイズの絶妙なバランスを感じてもらっています」
これをメディア関係者にも体感してもらうために考案したのが、今回、私が巻き込まれた“Catch GP if you can!”というプロモーションイベント。一週間『ww.tcファイナンシャル パワーリザーブ』を貸し出し、その体験をブログにアップするのがこの企画のキモなのです。
プロモーションのやり方は、ブランドによって異なります。有名人を集めるイベントを開催したり、スポーツ大会をサポートしたり、あるいはスイス本国へのファクトリーツアーを開催する場合もあります。しかし肝心の時計に触れることが出来なければ、結局“時計の本質”を伝えることは難しくなるでしょう。
時計バブル全盛期であれば、派手なイメージだけでも時計は売れました。しかし、バブル崩壊によってユーザーは“本当によい時計”を求めています。そんな時代にあって、その“よい時計”にじっくりと触れる機会を与えられるのは嬉しいことです。
我が家に到着したww.tcファイナンシャル パワーリザーブを早速つけてみると、確かに腕馴染みはよい。これはラグの形状が関係している。個人所有の時計と比べても、1.5倍くらいラグが長くかなり湾曲しているからだ。ノン・クロノグラフモデルなので、ダイアルがすっきりしており視認性もかなり良好。
驚いたのは、デスクで原稿を書いているだけ。という状態だったにもかかわらず、2時間ほどでゼンマイが1/4も巻き上がっていたこと。搭載されているGP製Cal. GP033G0の巻き上げ効率については、普段はほとんど考察したこともなかったので、実際に着用していなければ気がつかなかったでしょう。
では肝心のワールドタイム機構はどうか。残念ながら株も相場も縁がないので、ファイナンシャル表示はそれほど活用できません。しかしワールドタイム機能はむしろ大好き。
というのも、僕は仕事が煮詰まると『世界の窓』という世界中のウェブカメラをリンクするサイトをチェックして、世界中の風景をみて現実逃避しますが、この時計さえあれば、“今、どの地域が一番の見ごろを迎えているのか”がすぐにわかります。パリのエッフェル塔の煌めきも、ハワイの朝日も見逃すことはありません。おかげで、肝心の仕事がはかどりませんでしたが…。
日本時間が20:40。ロンドン市場(青い線)はそろそろ終盤戦を迎える一方で、ニューヨーク市場(赤い線)の開場が迫っている。 |
ジラール・ペルゴ(ソーウインド・ジャパン) 03-5211-1791