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機械式時計は一生モノ。は本当か?~カスタマイズウォッチのススメ~

篠田哲生プロフィール


  機械式時計のメリットとして、「一生使うことができる」という点を挙げることがあります。たしかに歯車とレバーの組み合わせという極めてアナログな機構のため、その気になればパーツだって作れるので、メーカーの都合を別にすれば、修理不能になる事が滅多にないのは事実です。


  でも、飽きちゃうんですよね。ユーザー側が。特に最近の時計はトレンドを強く意識しているので、時代が流れれば、やはり古臭く見えるし、なによりも自分が成長することで、時計への目線も好みも懐具合も変わります。あんなに好きだった時計も、徐々に使わなくなる…。こうなると“一生モノ”とは呼べないですよね。


  話は変わりますが、自転車を購入しました。キャノンデール「CAPO」という非常にシンプルなモデルを選んだのは、カスタマイズするのが前提だったから。すでにハンドルやブレーキ、ペダルなどをちょこちょこと変更して遊んでいます。このように時計だって自分の好みに合わせてどんどんカスタマイズが出来れば、当分は飽きることなく楽しめるのではないでしょうか。


  カスタマイズの中で最も簡単なのは、ストラップを変更すること。色や素材を変更するだけで全く異なる時計に見えますから費用対効果も抜群です。しかし外見だけでなく、時計の中身もカスタマイズできる時計があるのをご存じでしょうか。


  オーストリアの「ハブリング2」は、IWCやランゲ&ゾーネで技術顧問を務めていた時計師リチャード・ハブリングが奥様と共に立ち上げた小さなブランド。何と時計を購入した後に徐々に機構を追加していくサービスは、唯一無二のユニークな特徴です。


  ベースとなる時計は、「タイムオンリー」「ジャンピングセコンド」「オートマティック」「クロノスポーツ」の4種類。特に「タイムオンリー」と呼ばれる、ノンデイト&スモールセコンドのシンプルモデルは、スタートの価格が手頃なのでオススメです。ここに搭載するムーブメントは、かつて懐中時計用に開発された傑作Cal.ETA6498-1。このムーブメントはパーツが大きい分余白が多いため、カスタマイズするのに最適ということで選ばれました。


  ハブリング2ではダイアル交換やケ―ス素材の変更といった簡単なカスタムから始まり、レギュレーターやポインターデイト、ムーンフェイズなどのプチ・コンプリケーションへの進化が可能。さらにトゥールビヨンまで搭載できるので、自分の好みと懐う愛に合わせたカスタマイズができるのです。ちなみに、少数精鋭の時計師によるカスタマイズですから、納期もプチ・コンで2~4ヵ月、トゥールビヨンとなると1年以上かかります。


  飽きるたびに時計を買い換えるという行為自体は否定しませんが、何年も苦楽を共にした相棒を手放すのは忍びない。それに比べて人生の節目ごとに、愛用の時計に機構を追加していく。というのは語れるストーリーです。そして、人生の伴侶として足跡が残せる時計だからこそ、“一生モノ”と呼ぶことができるのではないでしょうか。


Habring² TIMEONLY ―ハブリング2 タイムオンリー―


 

同社のファーストモデルは最もシンプルなので、多彩なカスタマイズに向いている。購入時に選べるダイアルバリエーションは、写真の「シルバーロジウムインデックス」だけでなく、コパー(銅色)やブラックなど計5種類の中から選択可能。年間生産本数が50本程度のため、時計の販売はネットショップ(http://www.habring-japan.com)か、正規輸入代理店であるワールド通商が経営する「フランク・ミュラー ウォッチランド ギャラリー」のみで行う。
手巻き、SSケース、ケース径42㎜。27万3000円



 

こちらはカスタマイズの一例で、「ポインターデイト」を追加している。カスタマイズ価格の目安は16万8000円だが、カレンダーのインデックス位置などの細かい調整も可能なので、最終的な価格は多少前後する。



 

究極の夢といえる「トゥールビヨン」カスタムモデルの価格は、まず見積もりを取ってから。もちろんポインターデイトの上にトゥールビヨンを追加することも可能だ。



ハブリング2公式サイトhttp://www.habring-japan.com
ワールド通商 03-3549-3011