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記憶の中の風景 Vol.05 クロアチアの古都に息づく、美しいホテルとレストラン


  前回、クロアチアで出逢ったホテルとレストランの話をいたしました。日本人にとって東欧は馴染みの薄いエリア。旧共産圏であったことから、観光地としてのレベルを疑問視される方も少なくないのですが、ことこの国に関しては、そのイメージはまったく当たっていません。だいたいアドリア海を挟んで、イタリアの対岸にあたるわけですから、イタリア人の観光客が多い。あの、楽しむことに貪欲な人々が大挙して押し寄せてくるわけですからね、観光地として魅力的でないわけがありません。

 

クロアチアの古都に息づく、美しいホテルとレストラン

  前回はそのクロアチアの中でも最も高名な観光地であるドゥブロブニクのご紹介をしました。本当はもうひとつ、スプリットという街についてもお話しするつもりだったのですが、ともかくドゥブロブニクが素敵過ぎて、その思い出を書いているだけでえらい分量になってしまい、スプリットまで手が回らなかったのでした。そこで今回は、そのスプリットのホテルとレストランを思い出してみようと思います。

 

  スプリットは街の規模としてはドゥブロブニクより大きく、首都のザグレブに次ぐクロアチア第2の都市です。このスプリットには、ローマ皇帝ディオクレティアヌスがその余生を過ごした宮殿を中心に発展した歴史的建造物が残っているのですが、ここがすごい。名もない石畳の路地が静かで美しい企みを秘めて交差し、ふとした拍子に人影が途絶えた広場からは、永遠にも似た長い時の流れの中で降り積もった物語が密やかに立ち昇る気配……。

 

クロアチアの古都に息づく、美しいホテルとレストラン

  スプリットの歴史は遠く、紀元305年にローマ皇帝ディオクレティアヌスが余生を送るための宮殿をこの地に建てたことに始まるそうです。法隆寺ができる以前の話。東西150m、南北200mという広大な宮殿は、しかしディオクレティヌスの死後、次第にさびれ、何百年かを経て、一度は廃墟となりました。そんな廃墟の中に人々がいつしか住みはじめ、宮殿の城壁の中に住居を建てていき、そうした歴史の堆積の上に、この詩的な迷宮、スプリットは呼吸をしているわけです。今もこの宮殿内には3,000人ほどの人々が“暮らして”いるそう。ちょっと日本ではお目にかかれない光景が、そこにはあります。もちろん世界文化遺産にも登録されています。

 

 

 

 

 

 

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