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記憶の中の風景 Vol.06 青森・弘前で出逢った、絶品フレンチ


  仕事柄、日本国内のいろいろな街を訪れる機会が多いのですが、そこでその街の“意外な顔”に出逢うことがあります。

 

  例えば、印象深いのが青森県の弘前市。この街には私は不思議な縁があるようで、もう5~6回は訪れています。

 

  以前、勤めていた出版社を退職したときも、「あー、今日から会社に行かなくていいんだー」とボーっとしているうちに、ふいに「そうだ、青森県に行ってみよう」と思い立ち、そのまま渋谷駅の“みどりの窓口”に行って夜行寝台列車のチケットを購入。その晩に上野駅を出る「あけぼの」に乗って弘前まで約10時間の旅をした……なんていう思い出もあります。

 

  あの時、私は何を求めて、早朝の弘前駅に降り立ったのだったか? それは今となってはよく思い出せないのですが。

 

  そんな弘前の“意外な顔”というのは、ここが実はフランス料理の街であるということ。人口18万ぐらいのこの街には、フランス料理店が(ちょっと大袈裟に言えば)ひしめいているんです。

 

  フランス料理は根付きにくい・・・・・・といわれる日本の地方都市にあって、これはかなり異色。この街では、おいしいフレンチに出逢う機会には事欠かないんです。

 

  ではなぜ、この街に独特のフランス料理文化が根付いたのか? これにはいろいろな説がありますが、“これが正解”と定まったものは、まだないようなのです。

 

  ただ、そうした“フランス料理の街”の成立に、「レストラン山崎」が大きな貢献を果たしたことは間違いないでしょう。

 

青森・弘前で出逢った、絶品フレンチ

  実際、この街のフランス料理店のオーナーシェフの何人かは、「レストラン山崎」で修業したという経歴の持ち主なのです。そんな名レストランの料理。写真は「鯵ヶ沢産幻の魚イトウと木村秋則さんの自然栽培りんごと帆立、シードルのソース」ですが、これはソースが絶妙! やっぱりフランス料理の精髄はソースにあるんだと、実感させてくれる味です。

 

  この「レストラン山崎」の名声を支えているのは、まずは素材の質の高さです。

 

  シェフの山﨑隆さん本人からして、料理自慢はほとんどしません。でも「この林檎が入れられるのはうちの店だけだよ」と、素材は自慢する。

 

 

  それだけ食材を徹底的に吟味し、優れた生産者との相互信頼にもとづくコラボレーションを行っている、ということなのです。

 

  ただ料理を作るだけではない。もっと巨視的で、もっと誠実な試み。それがひとつの皿の上に結晶しているのが、「レストラン山崎」の料理です。だって、ほら。このレストランの料理名、異常に長くないですか? それだけ、生産者の名前を伝えたいんです。優れた生産者が作り出す食材の豊かさを、お客さんに感じて欲しいという想いが、メニューにすでに表れているんです。

 

青森・弘前で出逢った、絶品フレンチ

  写真にはありませんが、「木村秋則さんの自然農法栽培りんごの冷製スープ」は衝撃的でした。豊潤な蜜の甘みが、生クリームとなんら違和感なく、素直に溶け合っている。このスープを飲むためだけ弘前を訪れる人がいても、多分不思議じゃないです。なぜなら山崎シェフが考案したこの料理は、弘前という土地、そこを代表する林檎という食材に、深く想いをめぐらせて初めて、生むことができるものなのでしょうから。つまり弘前でしか味わうことができない料理なのです。

 

 

 

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レストラン山崎
住所:青森県弘前市親方町41 
Tel:0172-38-5515 
月曜休 50席 
ランチコース¥1,500・¥3,000、ディナーコース¥3,500・¥5,000・¥8,000、アラカルト¥1,500~
  フランス料理の店 カルティエ
住所:青森県弘前市宮川3-17-1 
Tel:0172-37-5010 
無休 席50席 
ランチコース¥1,260~、ディナーコース¥2,625~、アラカルトあり
     
フランス食堂 シェ・モア
住所:青森県弘前市代官町53-2 
Tel:0172-33-7990 
定休日:無休 席70席 
ランチコース¥1,575~、ディナーコース¥2,100~、アラカルトあり