続いて、瀟洒な一軒家レストラン「カルティエ」をご紹介しましょう。
このレストランは、地元では人気デザートショップを併設していることでも有名。センスの良さを感じさせる純白の壁に穿たれた入口の扉を開けると、すぐ左手がデザートショップになっています。建物の中に別の建物が入っているような感覚がおもしろい。
このデザートは、もちろん単独のショップとしてテイクアウトもできれば、レストランのコースのデザートとしても活躍しています。
レストランのオーナーシェフである館山進一さんにうかがったところ、こうしたデザートショップを併設する形態になってから6、7年ぐらいだそうです。それまではコース料理のデザートも館山さんが作っていたのですが、パティスリーシェフと出逢ってこの形を取ったところ、自分も料理に専念できるようになって、店の評価は確実に上がったらしい。
「もともと住宅街にある店ですから女性客が多いでしょう? だからデザートがコース料理全体の印象に占める比重も高いんです」
その館山さんは代官山の老舗フレンチレストラン「PACHON(パッション)」で長く修業されたシェフですが、そこで学んだこの「カルティエ」でも名物料理になっている「カスレ」。もう、この店を語ることは、すなわちこの料理を語ることだと言ってもいい。それほど、館山さんにとっては大切な料理です。
「カスレ」は南仏オック地方、カルカソンヌやトゥールーズの地方料理。ミステリー作家・笠井潔の名作「サマー・アポカリプス」の舞台となった地方ですね。
この料理はごく簡単に言うと、白隠元豆を主原料にして豚肉ソーセージや鴨肉などを加えて煮込んだ、いわば豆のシチューです。正直、見た目は地味ですよ。「カルティエ」は店構えがお洒落なだけに、ちょっとした落差を覚えるくらい。しかし館山さんがこの料理にかける情熱は、並大抵ではない。
「タルベッシュ(白隠元)はこの料理に合うものを、わざわざ板柳町で作ってもらっているんです。ソーセージもトゥールーズで食べられているもののレシピを、ある家族経営のソーセージ屋さんに渡してね、これも特別に作ってもらっています」
そして鴨は青森独特の食材として名高い“銀の鴨”。聞けば、本場にはこの料理の協会が存在しており、“正しいカスレ”を作っているとこの協会が認めた料理人にだけ、ディプロマを発行しているそう。もちろん、館山さんはこのディプロマを持っています。
「日本全国で10人いるかなあ。少なくとも東北では、私だけですね」
そうかー。地味に見える田舎料理(失礼!)ですが、一朝一夕にできるものではない。奥が深いんです。
そしてそんな“正しいカスレ”を成り立たしめている青森の食材たち。館山さんのカスレは、そのままオック地方であり、そして同時にまるごと青森なのです。そこが素晴らしい!
レストラン山崎 住所:青森県弘前市親方町41 Tel:0172-38-5515 月曜休 50席 ランチコース¥1,500・¥3,000、ディナーコース¥3,500・¥5,000・¥8,000、アラカルト¥1,500~ |
フランス料理の店 カルティエ 住所:青森県弘前市宮川3-17-1 Tel:0172-37-5010 無休 席50席 ランチコース¥1,260~、ディナーコース¥2,625~、アラカルトあり |
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フランス食堂 シェ・モア 住所:青森県弘前市代官町53-2 Tel:0172-33-7990 定休日:無休 席70席 ランチコース¥1,575~、ディナーコース¥2,100~、アラカルトあり |