TOP > Travel > 旅行 コンシェルジュ 星野 智之 > アドリア海の貴石は輝く、世界文化遺産の古都が眠るクロアチアへ 1
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  そしてもう一軒。世界文化遺産ドゥブロブニク旧市街は、石を積み上げた城壁によって囲まれています。その中へはプロチェ門とピレ門というふたつの入口しかなく、この中世の要塞都市を訪れる世界中からの旅人を迎え入れるホテルも、そのほぼすべてが城壁の外に位置しています。

 

  しかし唯一、この「THE PUCIC PALACE」だけは、城壁の内側、それも旧市街の中心部に息づく5ツ星ホテルとして、旅人の憧憬を集めているのです。このロケーションは、ひとつの奇跡とさえ呼べます。ここに宿る旅人は、自分のゲストルームの窓から中世の美しい街並みを見ながら、眠りに落ちることができるのですから。

 

アドリア海の貴石は輝く、世界文化遺産の古都が眠るクロアチアへ 1   アドリア海の貴石は輝く、世界文化遺産の古都が眠るクロアチアへ 1

 

  かつては貴族の邸宅だった建物を改装したのだそう。例えば木のドームのような屋根に穿たれた天窓から、天球にまたたく星を眺めることができる最上階のスイートルーム。あるいはダウンライトの光芒の下に、荘重な雰囲気を湛えた市松模様の壁が浮かび上がるルーム。19のゲストルームはいずれも、中世建築へのオマージュを抱いたまま、最新の設備と美しい照明効果を与えられて、古都の中心点に潜んでいるのです。

 

  単に世界地図上の移動ではなく、中世への時間旅行を可能にする稀有なホテル。確かに、ふたつとはないはずです。

 

  さらに、ついでと言ってはなんですが、せっかくですからレストランも一軒だけご紹介しますね。「LABIRINT(ラビリント)」――その名の通り、迷宮を想わせるそのレストランは、旧市街への入口であるプロチェ門のすぐそばに広がっています。

 

  テラス席だけでも3か所。さらに1階にホール席と、中庭にはウェイティングスペースとしても利用できるオープンスペースのテーブル。さらに城壁の石壁を刳り抜いたような形の、秘密めいた個室スペースまでが用意されています。変化に富んだ店の中を回遊するだけでも、密やかな興奮が旅人の胸には湧くはず。

 

アドリア海の貴石は輝く、世界文化遺産の古都が眠るクロアチアへ 1   アドリア海の貴石は輝く、世界文化遺産の古都が眠るクロアチアへ 1

 

  こうした複雑な構造を持つのは、このレストランがドゥブロブニクの城壁をそのまま利用しているからです。テラス席のひとつは城壁の上に造られ、全体にアールを描いて奥へと続いています。キャンドルが置かれているスペースは、かつての銃眼ではないでしょうか。その城壁の下方に潜んだ個室では、鉄の格子がはまった奥の窓のすぐ外にまで海が迫っています。

 

  この不思議な魅力を帯びたレストランで、人々は深夜まで陽気に語り合い、グラスを傾けています。テラスのすぐ外にはアドリア海が、そして視線を転じれば長い時間をくぐり抜けてきた街並みが広がります。

 

  そう、その時に旅人は気づくでしょう。

 

  “迷宮”とはこの店だけを指すのではない。ドゥブロブニクそのものなのだと。そんな迷宮がこれからも永遠にあり続けますように。乾杯。

 

  いやー、思ったより長くなっちゃいました。スプリットについては、また来月――ということにさせてください

 

DOBROVNIC PALACE
Masarykov put 20, 20000 Dubrovnik
T+385・2・0430000 F+385・2・0430100
http://www.dubrovnikpalace.hr

THE PUCIC PALACE
Ulica od Puca 1, 20000 Dubrovnik
T+385・2・0326222 F+385・2・0326223
http://www.thepucicpalace.com

LABIRINT
Svetog Dominika b. b., 20000 Dubrovnik
T+358・2・0322222 F+358・2・0322220
http://www.labirint-dubrovnik.com

 

 

 

 

 

 

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