ノルウェーは現在は世界有数の福祉国家として知られているが、その財政は石油・天然ガスなどの天然資源によるところが大きい。そのため将来の資源枯渇に備えて歳出抑制策がとられていて、水力発電や地熱発電などが盛んであり、国内でのエネルギー政策は世界でも最も進んだ国である。そのため住民のエコ意識も高い。世界有数の石油・天然ガスの資源国家でありながら、それらは全て輸出に回し、自国のエネルギー消費は水力発電でまかなうという政策を取っている。1969年に北海油田が発見されてから油田・ガス田の開発が進み、国家の輸出の3割を超えているこの国は、それまで決して豊かな国ではなかったのだが、今や世界でもっとも豊かな生活を送れる国との評価も得るようになった。そのためか文化・芸術に対しての理解も非常に高く、街に芸術が溢れているように感じるのもそのせいかも知れない。
平均寿命や識字率、男女平等など、文化的にも世界のトップを行くこの国では、やはり政治の力が大きいのか、税金は高くとも、福祉が大変手厚く、老後の心配が少ないために国民の国家に対する満足度も日本のそれとは大きくかけ離れているように思われる。周囲を海で囲まれ、豊かな自然に恵まれたこの国は、日本とほぼ同じ面積を持ち、同じような環境でありながら、周囲の侵略や独立など、様々な歴史を辿りながら、全く異なる発展を遂げてきた。現在の日本の政治の混迷を見るに、北欧諸国に学ぶことは多いような気がする。ただしこの国の人口は日本の約30分の1しかないため、それらをそのまま当てはめることは難しいだろう。
一部の地域では夏場に日の沈まない「白夜」の時期がある一方、冬場には日が昇らない時期もあるこの国では、特に室内にその楽しみを求めるためか、インテリア・食器などの文化が非常に発展している。日本でもブームとなった「北欧デザイン」の食器などは特にポップで、温かみもあるとても洗練されたもの。街の雑貨屋さんに立ち寄れば、日本人の感性では生まれないようなデザインの商品が多く見られる。これまで「遠い国」という印象が強かったノルウェーではあるが、直行便なども出るようになり、航空運賃もずいぶんと安くなった。日本とは全く異質の成長を遂げた「文化」を味わうために一度は訪れてみてはいいかがだろう。
Photo&Text:Takamasa Wada