「北海道は、実は冬がいい」
北海道で観光関連の仕事に携わっている人は、口をそろえてそう言います。北海道観光のオンシーズンは、なんと言っても夏。しかし観光客が減り、雪におおわれて白銀に輝く北海道の大地ほど美しいものはないと。
まだ誰にも踏み荒らされていない白銀の大地――寒いのは苦手だけど、暖かな部屋の中からそんな風景を一日、ぼんやりと眺めていられたら、そんな素敵なことはない。確かに、そうは思いませんか? ただ雪に降り込められて、ホテルから出ることもできずに、カフェで珈琲を飲み、ルームで本を読み、そして雪原を眺めながら過ごす一日。今回は、本格的な雪の季節の到来に合わせて、そんな過ごし方が似合う北海道の小さなホテルを何軒かご紹介したいと思います。
まず私の一番のお薦めは、北海道東部、別海町にある「ヘイゼル・グラウス・マナー」。英国の田園に残る荘園領主の館をイメージさせる、煉瓦造りの瀟洒なホテルです。
鴨撃ち、鹿狩り、川魚釣り……。そんな英国貴族たちの湖水地方での休日の過ごし方のイメージが、この道東の地とぴったりと重なり合うことから、この旅荘は生まれたのだそうです。実際、道東ではジビエ料理の素材には事欠きません。このホテルでも自家菜園から採れる野菜とジビエが響き合う料理を味わう素敵なレストランが設けられていて、この料理は秀逸(ちなみにこのホテルの支店にあたるレストランが広尾にあります)。夏ならば敷地内にある厩舎で飼われている馬の背に揺られて草原を巡る楽しみもあり、冬が来ればスノーモービルで雪原を駆けるというアクティビティが用意されます。そして地下の映写室で映画を観て過ごす日があってもいいでしょう。
アンティークの地球儀や書棚に彩られた気品あふれる英国調のラウンジも居心地よければ、ゲストルームの趣味もいい。8室だけの、“隠れ家”という言葉がぴったりのホテルなのです。
次に「チミケップホテル」。林間を縫う細い山道の先、チミケップ湖の湖畔に佇むホテルです。中央に石積みの塔を抱く、山荘風の木造建築。平成元年の開業で、こちらも全7室。
このホテル、以前は冬の間はクローズしていたのだそうです。それを‘03年の冬から営業するようになったのは、やはり何といっても、この湖畔の冬の風景が透明感に満ちて美しいから。そんな旅人にそれを見てほしい……。スタッフにそう想わせるだけの素晴らしいロケーションを、実際このホテルは持っています。秋には針葉樹の落ち着いた緑と広葉樹の燃え立つ紅が絵のような綴れ織りを映し出すチミケップの湖面は、冬になれば氷点下の空気に厚く硬く結氷し、湖上を歩いて散策できるようにもなるのだそう。レストランの窓いっぱいに、そんな湖面が映し出されます。ロビーには薪のはぜる音、ゲストルームには鳥の声。
「カナダの風景に似ている」と呟くゲストもいるそうです(私はカナダに行ったことはありませんが)。あなたなら、ここに何を見るでしょう?
■HAZEL GROUSE MANOR(ヘイゼル・グラウス・マナー) 川上郡標茶町虹別原野65線116番地1 Tel:015-488-3888 http://www.hazelgrouse.com 1泊朝食つき1室(2名利用時)\26,250~ |
■CHIMIKEPP HOTEL(チミケップホテル) 網走郡津別町字沼沢204 Tel:0152-77-2121 http://www.chimikepp.co.jp 1泊2食つき1名\15,750~ |
■MACCARINA(マッカリーナ) 虻田郡真狩村緑岡172-3 Tel:0136-48-2100 http://www.maccarina.co.jp 1泊2食つき1室(2名利用時)\36,750~ |