TOP > Travel > 旅行 コンシェルジュ 星野 智之 > 時が止まった北の大地、北海道・十勝三股

記憶の中の風景 Vol.08 時が止まった北の大地、北海道・十勝三股


 私が初めて、十勝三股の地を通り過ぎたとき、私はその場所が十勝三股だとは知りませんでした。紅葉の時期を少し過ぎたころだったでしょうか、北海道の帯広から国道273号線を北上しているときでした。何か、ぽーんと開けた場所が突然現れたのです。別に何か眼を引く建物があるわけでもなく、それまで通り過ぎてきた場所のように白樺林が続いているだけの光景なのですが、その林がそこだけ不思議に開けて、明るい陽射しに包まれている印象があったのです。

 

 

時が止まった北の大地、北海道・十勝三股   時が止まった北の大地、北海道・十勝三股

 

 

 「あれ? ちょっと不思議な場所だな」と思いながら、そのときは車を止めることもせずに走り過ぎてしまったのですが、後日、気になって自分が通った道を地図で確認したときに、それがかねてから気になっていた、“十勝三股”だと気がついたのでした。

 

 十勝三股の名は、鉄道好きの方ならご存じかもしれません。また廃墟マニアの方なら名前を聞いたことは必ずあるでしょう。すでに廃線となってしまった、旧国鉄士幌線の終点だった駅です。

 

時が止まった北の大地、北海道・十勝三股

 旧国鉄士幌線は帯広を起点に、十勝平野を北へと走る路線でした。終点の十勝三股までの開通は昭和14年。農作物の輸送と、十勝三股から伐り出される木材の輸送が敷設の目的で、事実、一本の道路さえ通じていなかった十勝三股の地は、樹海を切り拓いたこのレールによって初めて街と結ばれ、以降は全国屈指の木材生産地としてその名を馳せることになるのです。

 

 ……と、ここまでの話だけでもロマンティックな気がしませんか? 以前、沖縄の西表島で、島内のどの集落とも道で結ばれていない船浮集落を訪ねたことがありましたが、北海道にもあったんですね、どこともつながっていない集落。士幌線のそんな成り立ちは聞いていたので、十勝三股はいつか行ってみたいと思っていたのです。それを知らないうちに通り過ぎていたとは。

 

 

 

<< PREV | 1 | 2 NEXT >>

 

 

■三股山荘(十勝三股の喫茶店) 
北海道河東郡上士幌町字三股 
Tel:01564-4-2165
■上士幌町鉄道資料館(タウシュベツ橋梁に行くなら、ここで行き方の確認を) 
北海道河東郡上士幌町字糠平 
Tel:01564-4-2041