そして弘前といえば、私のお気に入りの店がもう一軒。
「ポワン・ルージュ」です。まずはタコのカルパッチョ……だったかな、マリネかな。ピリ辛に仕上げてあって、実に美味しかったです。
そしてバーニャカウダ。チーズフォンデュ風にニンニクやアンチョビ、そして(たぶん)ウォールナッツオイルを合わせたディップをポットで熱して、そこに生野菜を浸す。これもいいですよ。生野菜をいちばん美味しく食べる方法かもしれない。あとはピッツァ・マルゲリータでしょ。これはバジルが利いていたなぁ。……ん? なにかご不満ですか?
そう、皆さんが言いたいことはわかる。それはつまり、こういうことでしょう?
フランス料理じゃ、ないじゃん!
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そうですね、確かに“フランス料理”とは言えないかもしれないですね。それがつまり、この店のコンセプトというか、フィロソフィーなんだろうと思います。
自ら厨房に立つオーナーの猪股誠治さんは、前回ご紹介したフランス料理店「レストラン山崎」に勤めていた、れっきとしたフレンチの料理人。でも自分で店を始めるとき、あえてフレンチとかイタリアンとかといった限定をしないで、カジュアルに楽しめる場所にしようと思ったのだそうです。
その結果、出来上がったこの「ポワン・ルージュ」は、お客さんの笑い声に満たされた、本当に居心地よい空間になったのです。
カウンターの上の黒板には、お薦めのメニューが白墨で書かれていますが、その感じからして、肩に余計な力が入っていなくて、いい。金額にしたって、「ポークソテー 温野菜添え」「大きめエビフライ」「メンチカツ ホットキャベツ添え」がいずれも¥1,300!
ビストロ……というか、ダイニングバーといったほうが近いかもしれません。
それだけにお酒は豊富です。ワインの品揃えも充実しているし、ウイスキーやリキュール類もバー並みにそろっています。私はうかがったときはタリスカーなんぞを飲んでいましたけどね。おいしい料理が楽しめて、しかもシングルモルトも充実している。こういう店は貴重です。
実はですね、この“弘前フランス料理紀行”シリーズで紹介してきたお店の中で、この「ポワン・ルージュ」だけは、私は2回行っているんです。昨年の2月21日と4月3日。次に弘前行くときも、また行っちゃうかもしれないなあ。案外、旅先ではこういう気の置けない店にこそ、惹かれるものなんですよね。