トロムソという街はノルウェー北部最大の都市であり、フィヨルドと呼ばれる複雑に入り組んだ内湾の中にある小さな街。「北のパリ」と呼ばれる美しいこの街は漁業が盛んであるが、トロムソ大学を中心とした学術都市でもある。美しく整備されたその街はゴミひとつ落ちている事もなく、この国の人々の豊かな暮らしを現しているかのようだ。観光客は近隣のロシアやフランス、ドイツなどヨーロッパ諸国の高所得者層が多く、美しい景観とともに、冬場は山スキーなどを楽しむ人がいるようだ。そしてこの地の大きな魅力が極夜(太陽が昇らない)から春先にかけての時期に多く現れる天空の光のイベント「オーロラ」だ。今回の旅の大きな目的のひとつだけにぜひこの旅の間に目撃したいと願う。
3月の終わりに訪れたため、極夜の時期(11月~1月)は終わり、太陽の射す時間が日々長くなっていく時期。晴れた日は春のような柔らかい日差しが降り注ぎ、オープンカフェに多くの人が日光浴にやってきている。不思議なのがカフェやスーパーの前にベビーカーが赤ん坊を入れたままで置き去りになっている姿。どうやらこの街では赤ん坊は店に入れないのが常識のようで、日本人としてはとても信じられない光景だ。日光に当てておくのが赤ん坊の健康に良いとかで、どれだけ治安がいいのかと驚かされた。町並みはとても整備されていて、市庁舎などもアーティスティックにデザインされている。さらに公的機関の予算が潤沢なためか、頻繁に清掃車が行き交い、清掃員が常に街をきれいに保っているようだ。
Photo&Text:Takamasa Wada