あなたは普段、家庭で、あるいはレストランで、水道水を飲んでいるだろうか。それとも常にミネラルウォーターを飲んでいるだろうか。  

ロンドンでは現在、「ミネラルウォーターではなく水道水を飲もう」という運動が推進されている。これは、英国政府が発表した気候変動プログラム(*)に基づいた行動のひとつであり、ロンドン市長は「これからは水道水しか飲まない」と発言し、自ら先導してこの運動を牽引している。  

地球温暖化という世界規模の問題に対して、日本を含め、世界各国がさまざまな取り組みを見せるなか、英国の温暖化防止への政策は今、EU内はもとより、世界をリードするものとして注目を集めている。

今回は、その英国でのエコロジーに対する政府、国民の取り組みについて、具体的にどういったものなのかを紹介したい。


  英国では気候変動(地球温暖化)対策において、国際、国家、企業そして個人の、それぞれのレベルで具体的な行動目標が掲げられている。
例えば、産業界レベルにおける対策を挙げると、英国政府は各企業に対して二酸化炭素の排出権(規制)を与え、企業側はその目標(企業に許可される排出量は、企業が二酸化炭素排出量の削減努力を図ってこそ達成できるものに制限されている)を達成することが義務づけられている。

  また、温室効果ガスの排出を抑えるのみにとどまらず、再生可能エネルギーの開発に対しても、政府が積極的に支援する形で、企業が、開発・イノベーションに取り組みやすい体勢を作っている。

  こうした企業の取り組みに対して、重要な役割を担っているのが「カーボントラスト」という組織である。この組織は、英国で2001年から企業の天然ガス、石炭、電力などの利用に対して導入された「気候変動税(日本でいう環境税にあたるもの)」を活用して設立された独立企業である(英国ではすでに、環境税としての税収が、企業の、地球温暖化対策費用として活用されている)。短・中期的には、省エネルギーと炭素管理を、補助金プログラムなどを通じて奨励し、中・長期的には低炭素技術の開発に投資、英国企業にとって低炭素技術によるビジネスチャンスをもたらすことを目的として活動しているのである。

  また、英国政府が環境問題の大きな柱のひとつと考えているのが、国民や企業の環境対策に対する意識を高め、変えていくことである。

  では、実際に国民にはどの程度、どういった形でエコロジー問題が浸透しているのであろうか。

  最近話題になっているのが、国民一人1人が生活する中で、どのくらい環境に負担を与えているか(Carbon Footprint)を計算することである。英国環境省のウエブサイトではCO2 Calculatorと呼ばれるシステムが導入され、国民が自分の与えている環境負荷を知ることができる。またサイトからは、その負荷を減らすための提案がなされ、国民はそれをふまえて、環境に負荷を与えない生活を選択、実践できるというわけである。

 

  また、住宅を販売する際には、屋根や窓の断熱効果などを専門家に査定してもらい、エネルギー効率を証明する書類の作成をすることが義務づけられた。その他にも家電製品には省エネルギーのランクを示すマークが貼られ、そのランクが商品のセールスポイントになる、といった考え方も企業、消費者の両者に認識されるようになってきている。


  *「気候変動プログラム(The UK Climate Change Programme)」とは、2000年に英国政府が英国内における気候変動政策を取りまとめて発表した計画である。主要な課題は、京都議定書目標を見据えた上で、国内における二酸化炭素排出量を2010年までに、1990年比で20%削減する、というものであった。
そのプログラムを、予測を上回る経済成長とエネルギー価格の高騰といった現状に照らし合わせ、新たな措置を加えて2006年3月に発表されたのが新・気候変動プログラムである。

【参考ウエブサイト】
英国環境・食糧・農村地域省サイト/Climate Change & Energy
駐日英国大使館サイト/2006年英国気候変動プログラム