2008年は日英にとって特別な年である。
江戸幕府が長い鎖国に終止符を打ち、日英の交流が始まって今年で150年目を迎える。

英国に関するさまざまな情報が錯綜する中、英国といえば?という問いに何が思い浮かぶだろう。プレミアリーグ、ビートルズ、英国王室・・・。誰もが知っている英国ではなく、今、何が英国から世界に発信されようとしているかを知りたければ、やはり英国に行くのが理想的だろう。しかし今回は日本にいながらにして英国を体感できる「UK-JAPAN 2008」を紹介したい。

『UK-JAPAN 2008』が開催されることとなった経緯や趣旨などについて、主催者の駐日英国大使館広報部長サイモン・ウッド氏にインタビューを行った。

「2008年、日英の外交関係が始まって150周年です。我々はそれを祝うためのイベントをしなければならない、と考えました。歴史的なことを考えるよりも、将来に向けてなにか行ったほうが有意義だと思い、未来につながるものにしようということになりました。『UK-JAPAN 2008』では3つの分野に絞ったイベントを開催します。クリエイティブ産業、科学技術、芸術です。なぜこの3つの分野かというと、これからの日英のコラボレーションの可能性が非常に高い分野だと考えられるためです。つまり将来の日英関係のさらなる強化に相応しい分野なのです」

『UK-JAPAN 2008』ではこれまでに行われたことのないイベントが多数あるという。その中の一つ『英国美術の現在史: ターナー賞の歩み展』は現代美術界で重要な賞である『ターナー賞』の歴代受賞作品が一堂に会する史上初の試みである。

   
ヴォルフガング・ティルマンス
《君を忘れたくない》
2000年
インクジェットプリント
Courtesy: The artist and Maureen Paley, London
  グレイソン・ペリー
《ゴールデン・ゴースト》
2001年
67 x φ35.5cm

サーチ・ギャラリー、ロンドン蔵
  クリス・オフィリ
《ノー・ウーマン、ノー・クライ》
1998年
243.8 x 182.8 x 5.1cm
アクリル、油彩、ポリエステル樹脂、紙のコラージュ、地図用ビン、象の糞、カンヴァス
テート蔵

しかし、このようなイベントを通して多くの人に英国を知ってもらうだけでなく、さらなる目的があるとウッド氏は言う。

「今回、様々な公認イベントを通して、現代の英国に対する意見を聞くという目的もあります。『UK-JAPAN 2008』のサイト上でブロガーを募集し、ブログで公認イベントの感想やこれから行く人に向けて情報を発信してもらっています。私たちの心強いサポーターでもありますね」

『UK-JAPAN 2008』では、今年一年を通して150を越えるイベントが予定されている。その多くが日本の企業や個人が企画したものであるという。いかに日本人の心が英国に惹きつけられているかを感じ取れるだろう。FERICでも「GBプレイス」や「ロンドンカット」など英国ファッションを取り上げているように、近年多くのメディアでファッションをはじめとする英国文化が取り上げられている。一体なぜこれほどに注目を集めるのだろうか?


D&AD賞のイエローペンシル
  「今回の『UK-JAPAN 2008』もそうですが、英国と日本は国レベルの関係が良好なため、文化交流が盛んなのだと思います。たくさん入ってくる英国文化の中で、例えばデザインやファッションが特に日本の若者に注目されるのは、それらが日本人の感性と通じるものを持っているからだと思います。現在開催中の英国発の国際的なデザイン・広告賞の優秀作品や受賞作品を集めた『D&AD賞2007展』ではクリエイティブ界の優れた最新デザインを紹介します。もちろん見ているだけでも楽しめますが、ビジネスにおけるヒントも見つけられるかもしれませんね」

このように最新のデザインやファッションを発信していく反面、特にロンドンなどの主要都市ではとても古い建物が修復されながら大切に使われているように、英国では古き風も大切にしている面も感じる。このような二面性はどうして共存するのだろうか?

「過去の発明や発見は、現代のイノベーションに繋がっているためです。『UK-JAPAN 2008』の公認イベントの一つ『ダーウィン展』に見られるように、ダーウィンの発見が現代の科学に非常に強い影響を与えています。伝統的、歴史的なことを大切にし、過去と現代のつながりを強化することで、より新しい創造性が生まれると思います。今回『UK-JAPAN 2008』で生まれる日英コラボレーションも未来と強いつながりを持つと信じています」

   
ダーウィンの書斎の再現展示   チャールズ・ダーウィン   イグアナ

2008年、日本にいながらにして現代の英国が体感できる、またとない機会がやってきた。英国を知りたい、少しでもそんな衝動に駆られたならば、是非とも足を運び、見て、聞いて、感じてほしい。

 
  英国大使館広報部長 サイモン・ウッド
1973年生まれ。エジンバラ大学卒業後、市場調査官などを経て、1998年に英国外務省に入省。2007年、駐日英国大使館に広報部長として着任。

  UK-JAPAN 2008
2008年1月から12月まで開催される様々な公認イベントや活動を通じて、芸術、科学技術、クリエイティブ産業の分野で創造性あふれる現代の英国を紹介するとともに、日英間のコラボレーションの活性化と両国のさらなる発展をめざした催しで、駐日英国大使館およびブリティッシュ・カウンシルが推進している。
http://www.ukjapan2008.jp
 








デミアン・ハースト 《母と子、分断されて》
「英国美術の現在史:ターナー賞の歩み展」
現代美術界で最も重要な賞のひとつである「ターナー賞」の歴代受賞作品が一堂に集まる初の試み。1980年代の「ニュー・ブリティッシュ・スカルプチュア」から、90年代の「ヤング・ブリティッシュ・アーティスト」、2000年代の最新の動向まで、過去20余年の英国現代美術の流れを再考できる。

2008年4月25日(金)~2008年7月13日(日)森美術館(六本木ヒルズ森タワー53階)
開館時間:10:00~22:00 / (火)10:00~17:00
入場料:一般¥1,500、
学生(高校・大学)¥1,000、
子供(4歳以上~中学生)¥500
【お問い合わせ】
Tel:03-5777-8600


「D&AD賞2007展:広告とデザイン-その卓越したクリエーティブ」
英国で最も権威あるデザイナーとクリエイターの団体であるD&ADの協力を得て、日本で初めて開催する。毎年開催される「D&AD賞」では、国際的に優れたデザイン・広告を表彰している。その審査の厳しさには定評があり、広告・デザインにおける専門性の開発・発展に尽力している。

今回、2007年の受賞作品とノミネート作品の双方から、グラフィックデザイン、ブロードキャスト、ウェブサイトなどの8部門が紹介される。

会場:アド・ミュージアム東京
開催期間:3月4日(火)~4月5日(土)
開館時間:平日11:00~18:30
土曜・休日11:00~16:30
休館日:日・月曜日
(入場無料)
【お問い合わせ】

Tel :03-6218-2500


「ダーウィン展」
ダーウィンの73年の生涯と進化論、そしてダーウィンが魅せられた生き物の世界や自然科学についての豊富な資料と映像が展示される。5年にも及ぶ「ビーグル号」での世界一周旅行や、「種の起源」の出版までにかかった約20年の研究と苦難の日々などを、手紙やノート、動植物標本・模型などで詳しく紹介し、ダーウィンが進化論の発表に至るまでを垣間見ることができる。

開催期間:2008年3月18日(火)~6月22日(日)
会場:国立科学博物館
開館時間:午前9時~午後5時
休館日:毎週月曜日、5月7日(水)
入場料:一般・大学生¥1,400(¥1,200)、小・中・高生¥600(¥500)( )内は前売りおよび20名以上の団体料金
【お問い合わせ先】
Tel :03-5777-8600