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芽吹き


  “部屋に花をかざる・かざろう”と言う言葉や活字はよく目にしますが、“部屋に枝ものを飾ろう”と言う言葉はあまり聞かないものです。なぜなのだろう? 花も枝もひとくくりになってしまっているのではないでしょうか。また、花と枝が一緒に生けられた時、必ずと言っていいほど主役は花になってしまいます。時に枝ものを全面に主役にするのも男の生け方としてカッコイイのでは……。

  生命の営みとはいえ、どうして初冬のころ葉が落ちたばかりの枝から、春またすぐに若葉(芽)が吹くのか? 不思議でなりません……落葉樹に限りますが、春に芽吹き、葉をいっぱいに広げ、夏に十分な栄養を蓄え、秋を向かえて冬の頃には葉を落とし、その葉で足元を温めて冬眠するかのようにじっと冬を越す。その姿には、生きているという生命感をひしひしと心に感じます。生き続ける力とでも言うものでしょうか。実際に、杉や竹はその力が強いそうです。気力が低下している時、苛立っている時でも、杉や竹に触れてみると気の流れを良くし、気持ちを安定させてくれる作用を持つようです。木から気を頂くのですね。



  木々が芽吹くのは、この辺りでは4月過ぎからが本番ですが、花市場には早切りした枝をハウスに入れているので、2~3月には出始めます。新緑の葉は人間で言うと赤ちゃんのよう。時期を逃すとすぐ成人した葉になってしまい、若く可愛らしい葉の雰囲気は感じられなくなってしまいます。まさに今が旬!

   

  今回様々な生け方をしてみましたが、気に入った枝ものをバサっとそのまま花瓶に入れてしまうだけで十分です。花に比べ持ちもよいです。水の管理さえしていただければ、今回使ったカツラもギンバも一ヶ月以上持つはずです。その間にすくすく成長も楽しんで頂けます。ヤナギ系のものとなれば、気がついたときには芸術作品のように根が生えています。そのまま土に植えて頂ければ、根づいてしまうほど強いのです。

 

  杉や竹ほどまでとはいきませんが、この初春の時期に枝ものを部屋に飾ると新緑の優しい緑が気持ちまでも生き生きと優しく落ち着けてくれ、心も安らぐように思います。生命力という力強さと芽吹く力の包容力。まるで男の生き様を思わせるような枝ものを自分流で生けてみてはいかがでしょうか。きっと春の風を吹き込んでくれます。

木を植えましょう! More trees!
国内外を問わず活躍するフラワーアーティスト。2006年にはInternational Annual of Floral Art 0506(国際フローラルアート年鑑)ベルギーにて、世界各国の選りすぐりのフラワーアーティストが出品する中、最優秀賞であるゴールデン・リーフ賞を受賞するなど、花の一瞬の美しさを見極め、日本独自の美意識を取り入れた作品が国内だけでなく海外でも評価され、数々のタイトルを獲得。自身のフラワーショップのある三重県菰野町と東京で花教室を主催するかたわら、TV出演や個展開催、2008年秋にはベルギーのStichting Kunstboek社より写真集を出版するなど、その活躍の場を広げている。

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