明けましておめでとうございます。
生きている節目々々として、元日は私たちの日常に美しい区切りを与えてくれています。これ程気持ちの改まる日はそうないでしょう。その改まった気持ちで姿勢を正し、自分の気に入った花へ誠心誠意向き合ってみる。“無”へ近づける至福の時となるでしょう。
今春、私が選んだ花は『椿』と『水仙』。共に強すぎることもなく弱すぎることもない花です。しかし、その存在は空間の中へ凛とした“張り”を与える。そんな花だと思います。
“生けることは、生かすこと”とは私のモットーですが、“生ける”ということは、その花を通じて己と向き合うことです。また私たち日本人にとっては、単に花で装飾するというのではなく、“奉げる”という気持ち、生命という超越したものに敬意を込める心でもあります。しかしながら、このような事はさて置き、花との触れ合いを楽しむことです。
ご自分の遊び心を存分に楽しんでください。
つらなる竹の器を重ねゆく年になぞらえて、つらつらと生ける……。花の歓喜の声が聞こえてきませんか?
また同じ器でも、花を替えれば雰囲気もがらりと変わります。何本かの花を生けるときは、その場にストーリーが生まれることが大切です。そうすれば、椿は椿として、水仙は水仙として、その場に息づいてくれます。
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これは一輪の椿を込み藁にたててみたもの。なんと美人なのだろうとため息が出ます。
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そして、一輪で生ける花ほど語りかけてきます。この水仙から何を感じられましたか?
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私は私のフィルターを通してこの花たちと向き合いました。だから、私自身を見られているようでもあり、恥ずかしくもあります。これらの写真は、私と花とが楽しんだ記録のようなものです。新しい一年の初めに新たな気持ちで花と向き合えば、新たな自分自身が見えてくるのではないでしょうか。このようなご時世だからこそ――2009年、初生けのススメ。