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初生け


  明けましておめでとうございます。

  生きている節目々々として、元日は私たちの日常に美しい区切りを与えてくれています。これ程気持ちの改まる日はそうないでしょう。その改まった気持ちで姿勢を正し、自分の気に入った花へ誠心誠意向き合ってみる。“無”へ近づける至福の時となるでしょう。

  今春、私が選んだ花は『椿』と『水仙』。共に強すぎることもなく弱すぎることもない花です。しかし、その存在は空間の中へ凛とした“張り”を与える。そんな花だと思います。 “生けることは、生かすこと”とは私のモットーですが、“生ける”ということは、その花を通じて己と向き合うことです。また私たち日本人にとっては、単に花で装飾するというのではなく、“奉げる”という気持ち、生命という超越したものに敬意を込める心でもあります。しかしながら、このような事はさて置き、花との触れ合いを楽しむことです。

  ご自分の遊び心を存分に楽しんでください。

 

  つらなる竹の器を重ねゆく年になぞらえて、つらつらと生ける……。花の歓喜の声が聞こえてきませんか?

  また同じ器でも、花を替えれば雰囲気もがらりと変わります。何本かの花を生けるときは、その場にストーリーが生まれることが大切です。そうすれば、椿は椿として、水仙は水仙として、その場に息づいてくれます。

これは一輪の椿を込み藁にたててみたもの。なんと美人なのだろうとため息が出ます。

そして、一輪で生ける花ほど語りかけてきます。この水仙から何を感じられましたか?

  私は私のフィルターを通してこの花たちと向き合いました。だから、私自身を見られているようでもあり、恥ずかしくもあります。これらの写真は、私と花とが楽しんだ記録のようなものです。新しい一年の初めに新たな気持ちで花と向き合えば、新たな自分自身が見えてくるのではないでしょうか。このようなご時世だからこそ――2009年、初生けのススメ。
国内外を問わず活躍するフラワーアーティスト。2006年にはInternational Annual of Floral Art 0506(国際フローラルアート年鑑)ベルギーにて、世界各国の選りすぐりのフラワーアーティストが出品する中、最優秀賞であるゴールデン・リーフ賞を受賞するなど、花の一瞬の美しさを見極め、日本独自の美意識を取り入れた作品が国内だけでなく海外でも評価され、数々のタイトルを獲得。自身のフラワーショップのある三重県菰野町と東京で花教室を主催するかたわら、TV出演や個展開催、2008年秋にはベルギーのStichting Kunstboek社より写真集を出版するなど、その活躍の場を広げている。

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