人が介在することで作品が成立する。LEDを使ったインタラクティヴ作品で、世界中を席巻しているUnited Visual Artists。そんな彼らが今年1月、新作「Contact」を東京で発表した。これはUK-Japan2008のオープニングを飾るインスタレーションとして、ブリティッシュ・カウンシルから依頼を受け制作したもので、LEDを敷き詰めたステージ上で映像と音が観客の動きにあわせて反応していくという作品。彼らが表現する作品に「人間」を感じるのはなぜか。そのインスピレーションの源とは。FERIC・アートコンシェルジュである市川恵一朗が斬り込んだ。

-六本木ヒルズでの「Contact」拝見しました。とても素晴らしい体験でした。United Visual Artistsを知らない方々のためにも、是非ここで自己紹介をお願いしたいのですが。


United Visual Artistsは、マット•クラーク, アッシュ Nehru そして クリス・バードの3人によって2003年、イギリスを中心に集結し結成されました。現在United Visual Artists は、12名。それぞれが様々なバックグラウンドを持っています。そもそも我々の活動は、Massive Attackなど、バンドのためのライブステージのデザインがスタートですが、そのフィールドは拡大していっています。例えば常設としての建築用インスタレーションもそうですし、人を交えたインタラクティヴな作品制作などですね。



-そういった活動や作品に一貫している、United Visual Artistsのテーマとは何でしょうか?


我々は見る人にとって忘れられない経験を、常に創造したいと思っています。それがミュージックパフォーマンスであれ、公共のライブ施設であれ。

-表現する上での研究開発に余念がないようですね。


ええ。活動の大半はそういったことに従事していますが、もちろんテクノロジーが私たちの最も重要な部分であるというわけではありません。ただやはりUnited Visual Artistsの制作活動を支えているのは、生産デザイン、アート・プロダクション、およびソフトウェア工学です。これらの3つの、核となる技術が互いに向き合い、繋がり、うまく混ざり合うよう活動の多くの時間を研究開発に充てているのです。

-では、そうしたテクノロジーが支えている「表現」に対して気をつけていることは?


我々の作品を視覚的に発表することに関して言えば、ディスプレイ技術の持つ最大潜在力をいかに引き出し、使いこなすかということに注意していますね。良い例として、LED技術を挙げましょうか。この技術は、これまでほとんどの方々が、ディスプレイ技術に合うように映像をビデオに撮り、スケーリングしていました。しかし我々は、“ピクセル パーフェクト”(完全画素)方法を取っているのです。この方法をとることによって、コンピュータ・システム上のあらゆるピクセル(画素)がLEDディスプレイ上の特定のピクセル(画素)を完全にコントロールすることが可能になっています。

-「インタラクティブ」な表現にヒトの介在の仕方は大切な要素だと思いますが、その点についてお考えを教えて頂ければ。


まず、人の介在がなければ、我々の仕事は存在していません!確実に観る人が面白いと反応して頂けるよう最大の注意を払っています。最大の挑戦の1つは、簡単に<相互作用>でき、単なるシンプルで基本的なものでない作品を製作することですね。最も参考になるのは子供です。彼らはテクノロジーから威圧されませんし、大人のように惑わされませんしね。

-United Visual Artistsの作品を観ていると、人間と呼応している印象を受けます。テクノロジーと人間のコミュニケーションは、どのようにすれば共鳴するのでしょうか。ご意見伺えればと思います。


技術の変化するペースが加速するに従って、技術との相互関係の重要性は増しています。ただ、1つの技術が使用できなかったとしても、それがどれくらい高度であるかは重要ではありません。ほとんどの技術がキーボードとマウスのパラダイム(理論的枠組み)によって創造されたように思えますよね。でも我々はそういう方法論ではない建築装置を深く追求したいと思っています。その中で最も面白いと思えるのが、複数の人間が一緒に開発に関わって、創り上げるものです。彼らが個別で開発するものより、もっと複雑なものを作成するためには、どのようにしたら一緒に創り上げることができるのか、という点に面白さがあると思います。 また、創造の過程で共有された記憶というのも非常に強力です。


-つまり、お互いの思いがけない反応が、創造という行為に作用するということでしょうか?


動作によって呼応する作品は、人の行動の結果、次に思いがけない反応を作る<フィードバックの連鎖>を生み出し易くさせます。人間が存在する一瞬一瞬、それは自分たちの想像よりもはるかにクリエイティブになれるのですから。

 
   
  2003年、英国のロックバンド、マッシブ・アタックのワールドツアーのビジュアルを担当し、そのクリエイティブな映像表現で注目を集める。現在、ロンドンを拠点に、ライブパフォーマンス、インタラクティブ作品、建築用のインスタレーションなど幅広い分野で活動し、特に観客が介在することで成立するインタラクティブな作品で先鋭的な作品を発表。http://www.uva.co.uk/ (英語サイト)