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パフォーミング・アートには、意味など関係なく、思わず笑いたくなってしまうものがあります。「何これ?」という驚きとともに、この「笑い」もまた、私たちの感性を心地よく揺らしてくれるエッセンスです。
この「笑い」の妙味を味わえるのが、土佐信道さんがプロデュース(社長業)しているアート・ユニット、「明和電機」だ。明和電機と聞くと、まるで町の電器屋さんみたいですが、実際に土佐さんの父親が経営していた電気会社の社名なのである。
土佐さんの兄が「2代目社長」、そして土佐さんが「3代目社長」としてアート活動を行っている。魚をモチーフにした「魚器(NAKI)」シリーズや、オリジナル楽器「ツクバ(TSUKUBA)」シリーズなど、実にユニークな作品を発表している。その作品を「製品」、ライブコンサートを「製品発表会」あるいは「事業報告ショー」と呼び、明和電機オリジナル作業着を着て世界各地でライブや展示会を行っています。私も何度か観に行かせて頂きました。
「製品発表会」では、「電協組合員」と呼ばれるファンクラブの若い女の子たちがキャーキャーと歓声を上げていましたね。そして土佐さんたち「社員」は大真面目な顔で、一見全くナンセンスに思える「製品」を演奏する。ぜひ実際に見て欲しいんですが、おかしいですよ。思わず「ニヤリ」としてしまう。しかもその「笑い」は、私たちの固定観念や凝り固まった常識をやんわりと揺り崩してくれる。それが心地よくてたまらない。その笑いは、製品のデザイン性、ギミックが優れているからこそのギャップ。美しいし、良くできています。
私はたまたま土佐さんのアトリエの近所に住んでおり、道や銀行など日常的な場で出くわすことがあります。青い作業着を着て「製品発表会」を行っている明和電機の存在自体がコンセプチュアルなんですが、普段の土佐さんは全く普通なんですね。全然当たり前の話なんですけど。とても丁寧な対応の方です。勝手にギャップを楽しんでますね。
明和電機は、楽器開発のノウハウを応用して作ったプロダクト打楽器玩具「Knock Man」シリーズなども販売していて、私もいくつか持っています。明和電機の大真面目なナンセンス性を凝縮したような「笑える」作品を皆さんも是非。
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