ゴッホやルノワールなどの絵画は、誰もがためらいなく「美術」と思いますが、私がこのFERICでご紹介している方々の作品を見せた場合、どうも「美術」という概念では見て頂けていない印象を受けます。そんな曖昧な状態に使われる事が多いのが「アート」という言葉ですが、個人的にはどういう解釈でお読み頂いても構いません。
私が思うアートの意味は「表現」そのものだと思います。日常の会話や、スポーツやエンタテインメントなどにも、ある種、美しい部分を感じたりします。そこに「表現」があり、それがアートだと思えるんですね。
では日常見られるそういった何気ない「表現」と、アートの表現とは何が違うのか、と聞かれれば、やはり、元は普通の「表現」なんだと思います。ここは比較するのではなく、その瞬間瞬間をどういうカタチで捉え、観る側に提案するか、否か、その違いなんだと思います。
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ある作品を前にして、その作品の中に絶対的に「入っている力」みたいなものを感じる瞬間があります。たとえば、絵の中の線1本にも、作家のすべてが入っているような作品。
そういう「力」を感じると私は、この作家はどういう人生を歩んだのかなとか、作家の歩いてきた道を勝手に妄想してしまう。それはきっと、線1本に込められたストーリーを見る側に考えさせる作用があるということですよね。文脈や風景を思い起こさせる作品は感情を揺さぶります。こういう出会いは、嬉しくなりますね。
日常の何気ない表現では、自分のすべてをさらけ出すことなんて、めったにないですからね。
でもそれをあえて表現したもの、表現せざるを得なかった感情が、アートという言葉に近づいていくのではないでしょうか。そんなギリギリの心境から創造されたもの、そこにアートの力があるのだと思いたいんです。 |