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ステーキフレンチ Minas

大人のたしなみ行きつけの店を作る

メインのカウンター席。シェフのきびきびとした調理を見ながら食事が出来るのがいい。他に個室も用意されている。

　ある年代になったなら、この料理だったら誰を連れて行っても間違いない、という店をいくつか知っておきたいと思うもの。そんな大人たちのレパートリーの中に、ぜひ入れておきたい肉料理の店が西麻布に開店した。表通りから住宅街に入る、静かな路地の一角にあるビル。目印は階段の入り口に小さなロゴのついた灯りひとつ。階段を降りると、シェフのきびきびした調理が見渡せる大きな一枚板のカウンター。こじんまりとした小さなレストランだが、他にも個室も用意され、プライベートは十分に確保できる。上質な肉を個性的な調理で美味しくいただける、フレンチテイストのステーキレストランだ。

　予約していた13000円（税・サービス料10%別）からのコースは、まずは７品の前菜から。フランスの三つ星レストランにいたシェフKei氏の繊細な調理が最初から堪能できる。ズッキーニのフラン、牛ヒレ肉のタルタル、メゴチのフリット、ブルーチーズとオニオンのキッシュ、肝のソースを添えたカワハギのカルパッチョ、トマトのカプレーゼ、パルマの生ハムなどが供される。大富豪のプライベートシェフも経験したKei氏の調理はとても細やかで、口うるさい美食家も納得させることだろう。

　二品目に京にんじんや小江戸菜などの温野菜のプレート。野菜料理を得意とする、シェフの目で厳選された野菜の甘みを楽しもう。素材を活かす生ハムのソースがメインへの期待を高めてくれる。メインに移る前にもう一品。三品目にはトマトと九条ねぎソースの手打ちちぎりパスタ、カキのムニエル添え。岩手産のプリプリした牡蛎の旨味をソースが数倍にグレードアップさせている。牡蛎がちょっと苦手な人がいてもこの料理だったら意外に楽しめてしまうのでは。

　そして期待高まるメインの肉は、常陸牛ヒレ肉のステーキ。予約客の来店時間から逆算して、数時間前からじっくりと低温で内部まで火を入れていく、フランスで会得した独自の調理法だそうだ。そのためこの店は完全予約制になっている。Kei氏によるとこのステーキの独特の質感を持つ絶妙な柔らかさは、この調理法でしか出せないもの。最後に薄く表面をカリッとさせ旨味を内部に閉じ込めたこのステーキは、脂がまったくしつこくなく、小食な女性でもスッと平らげてしまえることだろう。

　続いて、セカンドメインとでも言うべきハンバーグが供される。素材は贅沢に松坂牛を使っている。松阪牛ならではの旨味の凝縮したこのハンバーグは、肉本来の質感の強さと味わい深さで食べごたえ十分。付け合せの焼きおにぎりとの相性も抜群で、肉好きにはたまらない構成になっている。自分としてはこのハンバーグが一番印象に強く残った。良い肉を使って調理したハンバーグはここまで美味しくなるのだと感心した。最後に出てきたオリジナルのガトーショコラ、キャラメルアイスも甘さを控えて、肉料理の後にいただくに相応しい味わい。「美味しい肉が食べたい」でも「胃にもたれたくない」ときに、焼肉などを選ばず、この店に行けば、きっと至福の時を過ごさせてくれるに違いない。

※上記料理は一例です。コースメニューはおまかせで、仕入れ等により異なりますのでご了承下さい。

Photo & Text by Takamasa Wada

― Minasオーナーシェフ　Kei氏　プロフィール ―

フランス・パリの三つ星レストラン「Arpe’ge（アルページュ）」で全てのポストを経験。レギューム（野菜）セクションのシェフに就任後、大富豪のプライベートシェフとして、ミコノス島とパリで過ごす。またオープン1年足らずで「ミシュラン2007」の一つ星を獲得したアルベージュ時代の親友マウロ・コラグレコの南仏レストラン「Mirazur（ミラズュール）」の立ち上げから加わり、スーシェフとして働く。帰国後都内の店で料理長を務め、この度、本店開店を機に独立する。