TOP > Special > 11月特集「純然たる日本旅館に泊まりたい」
日本人のDNAが喜ぶ、宿。洋々閣

洋々閣

佐賀県唐津市東唐津2-4-40
Tel:0955-72-7181
Mail:info@yoyokaku.com
客室数:20室
チェックイン:15:00
チェックアウト:10:00
アクセス:福岡空港または九州新幹線JR博多駅から、福岡市地下鉄を利用、筑前前原で乗り継ぎ唐津下車。一時間に一本直行あり(JR筑前線)、西九州自動車道前原ICから国道202号線を経由して約30分。
http://www.yoyokaku.com/index.htm

  佐賀県は唐津に明治26年に創業した「洋々閣」は、唐津城を臨む町並みの一角の奥床しい場所に佇んでいる。その名から連想させるとおり、玄界灘の潮騒が聞こえてくる宿である。

 

  唐津へは、福岡から車で約60分。クロマツの茂った幻想的な光景が不思議な感覚を覚える“虹の松原”をぬけると、唐津の街並みが現れる。ここ唐津は古く、大陸から訪れる人々の玄関口として、また明治の時代には石炭の町として多くの人の往来があり、大いに賑わいを見せた街である。

 

  「洋々閣」は、遠方から唐津に訪れる石炭の商人たちの商談の場として、また心身を癒す宿として誕生した。

 

  「旅館には、さまざまな“系統”があります。政治、経済が動くところに宿はできるんですね。お寺や神社などを参詣する人の休憩所としてできた“宿坊”系統や、病気や怪我を治すため、温泉に入りに訪れた人が宿泊できるようにつくられた温泉旅館、最も新しいものは鉄道などの交通機関が発達して流行った“遊覧”を目的としたお客様のための観光旅館。洋々閣は、料理とお酒を提供する“料亭旅館”系統の宿です。泊まった宿がどの系統かを知るのも、おつな旅館の楽しみ方ですよ。」

 

 物腰柔らかな口調で、丁寧に話してくれたのは「洋々閣」女将である大河内はるみさん。英語の教師であった経験を活かし、海外からの客人の応対もスマートにこなす。「洋々閣」の116年に及ぶ歴史はもちろん、唐津について、日本の文化や伝統にいたるまで造詣が深く、近くの学校などに講師として招かれることもしばしば。なぜ、それほどまでに詳しいのですか、という問いに「外国の方が熱心に聞かれるものですから」とやさしく微笑みながら応えてくれた。

 

 

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心地よいときの流れる、和の文化が体感できる宿

 「洋々閣」には、日本の文化に憧れをもった多くの外国人客がやってくる。それは、この宿に“和の心”が凝縮した貴重な空間を見るだけでなく、実際に泊まり、触れられるところに大いに魅力を感じるのだろう。

 

日本人のDNAが喜ぶ、宿。洋々閣

 「日本をもっと深く見たい、そう思われて海外からいらっしゃる方がたくさんおいでになります。旅館の中には外国の方を敬遠されるところもありますが、うちではもっと日本の文化を知ってもらいたいので受け入れています。異国情緒を味わっていただきたいので、最初はあまりこちらからは英語で話しかけないように心がけています。」

 

 こうした細かな気配りで古きよき日本の空気を守る一方、「洋々閣」では大正時代の建築様式を残しながらも、時代に合わせて少しずつ改築している。例えば、天井の高さや風呂場、手洗いなど。情緒や日本建築の美しさを壊すことなく、客人の居心地の良さを考えた設計がされている。現代人に合わせて“日本旅館風”に新しく建築したほうが、よほど簡単だろうと容易に想像できる。

 

 「そのまま残したいと思うのですが、使える部分は使い、新しくすべきところはお客様に心地よく過ごしてもらうために、泣く泣く手を加えています。」

 

 

 木の香りに包まれた館内は古いもの、新しいものが絶妙に混ざりあい、日本人としてのアイデンティティを覚醒してくれるとともに、古臭さは一切感じさせない。 誰かが歩くたびにキュッキュッと鳴く小気味よい廊下の音は、この先変わることはないだろう。

 

 

日本人のDNAが喜ぶ、宿。洋々閣   日本人のDNAが喜ぶ、宿。洋々閣   日本人のDNAが喜ぶ、宿。洋々閣

 

 

 

日本の美を映し出す、松林の庭園

日本人のDNAが喜ぶ、宿。洋々閣

 正面の佇まいからは見てとれないが、「洋々閣」には玄関を上がった者だけが目にすることができる1000坪もの日本庭園がある。渡り廊下を潜る池、そこに絶えず注がれる水の音、樹齢200年を越える手入れの行き届いた90本の老松……日本の美を凝縮したこの庭園には、静かな時間が流れている。黄昏時に光が灯されると、時が静止したような錯覚に陥る。 「洋々閣」を誰よりも長く見守り続けてきた老松は、長い時間、潮風を受け強い生命力を感じさせる枝ぶり。まるで両手を広げ、そこを訪れる人を静かに温かくもてなしているようである。

 

 ここは我々現代人に日本の持つ美しさ、尊さを気づかせてくれる宿である。旅は日常を忘れて溜まったガスを抜く機会であるが、「洋々閣」には忘れないよう吸収し、帰りたい風景が今なお息づいている。

 

 

 

 

 

 

 

 

洋々閣で出逢う、もてなしの真骨頂
洋々閣で出逢う、もてなしの真骨頂
洋々閣で出会う、もてなしの真骨頂