アンジュノワールの店は、2軒に分かれている。1軒目は表参道の骨董通り沿いの1Fにあり、今までにオーダーのあった品々や、もともとオリジナルに作った商品を並べている。ここではお客様の感性を刺激し、創造力を広げるために様々なバリエーションの品を置いているという。言ってみればその品を見た人が、「もっとあんな素材で、こんなデザインにしたい」という閃きを助ける入り口にすぎない。本当の入り口は、この店の向かいのビルの2Fにある。アトリエを備えた応接間では、お客様のご要望にじっくり耳を傾け、時にはオーダーを受ける職人が直接話を聞きにくる、そんな贅沢で落ち着いた空間が広がっている。
世界中の教会や修道院を旅している時に、印象的な黒い顔の天使に出会った田原氏。後になって、ちょうどキリスト教と仏教の分水嶺である地域の寺院の壁画に黒い天使が描かれていることを知った。そこに争いではなく、西洋と東洋の融合を見た気がしたという。ヨーロッパと日本の伝統、最高の素材とのコラボレーションで至高の品を創るこの店にふさわしいとして、 『アンジュノワール=黒い天使』と名付けたそうだ。
既製のものに収まらず、常に妥協なく感性を解放し、実現していくという、本来人に備わった能力を、作り手と買い手で切磋琢磨していくことができるのが、オーダーメイドの何よりの魅力である。それを繰り返すうちに、本当に『いいもの』を見る目がどんどんと養われていく、と田原氏は語る。それゆえ一度この楽しさを知った人は次なる至高の作品を追い求め、終わりを知らない。オープンから5年たった今、リピーターが続々と増えつつある事実が、何よりもそれを物語っているだろう。
既製品に物足りなさや空しさを感じている人は、是非一度このアンジュノワールに足を運んでみよう。そこには豊かな感性を刺激し、さらに提案し、決して妥協を許さない品を創りあげてくれる芸術家や職人たちが、笑顔で迎えてくれることだろう。
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