一粒のショコラを口にする……舌の上でとろりととろけて、豊かな風味が広がる。それだけで思わず笑顔がこぼれてしまう。そんな力を持っているのが、ショコラである。しかし、その笑顔以外にもショコラを通してたくさんの笑顔が見たいと取り組む、名古屋のフランス菓子の名店レニエのグランシェフ・パティシエ長谷川享平氏の手掛けるショコラに出逢った。
名古屋市西区、庄内緑地公園に程近い閑静な住宅街に佇む「セヌフォ・ラ・ショコラトリー レニエ」は、「フランス菓子 レニエグランメゾン」に隣接したショコラ専門店である。
チョコレートの甘い香りが漂うエントランスホールには、1本のナンキンハゼ。真っ赤な外壁と扉はまるでパリの街角に訪れたようだ。店内に入ると磨き上げられたショーケースの中に、トリュフやボンボンショコラなどたくさんのチョコレートが並ぶ。その宝石とも言えるショコラの原料、カカオの主な生産地であるアフリカをテーマとした内装が、チョコレートを一段と美しく魅せている。「セヌフォ・ラ・ショコラトリー レニエ」では、ショコラ文化の本場であるヨーロッパ式に量り売りで販売され、選ぶワクワク感とともに、どれにしようかと迷ってしまうだろう。
「セヌフォ・ラ・ショコラトリー レニエ」のチョコレートは、アフリカ産と南米産のカカオを主に原料としている。香りの高さが特徴である南米産カカオの多くは、現在さまざまな品種が自然交雑した上に、発酵具合もバラつきがあるため、長谷川氏は南米エクアドルに足を運び品質の安定したカカオを厳選。そして農場を指定し、フレーバービーンズと呼ばれる香りの高い単一品種にこだわった。しかし、そこで出逢った農家の人々の生活水準の低さに驚き、フェアトレードによる原料調達に取り組んでいる。
さらに長谷川氏は、この冬からオーガニックカカオを使用した新作のショコラを店頭に並べる予定だという。
「適正な価格で、より安全で美味しいもの。しかし、まだまだそんなカカオは生産量も少ない。でもいずれは、うちで出すショコラはフェアトレードのオーガニックカカオを増やしていきたいですね」
そう熱く語ってくれた長谷川氏おすすめのショコラは、ドライイチジクをシナモン、バニラなどの香辛料とともに赤ワインで煮戻し、生クリーム、チョコレートと合わせココアをまぶした「トリュフ フィグ」。表面のココアの渋みと、カカオの豊かな香り、生クリームのまろやかさ、イチジクの甘酸っぱさとスパイスのほのかな刺激が、一粒にギュッと凝縮され、見事に融合。さらにプチプチとした食感がとても爽やかな逸品だ。
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「見た目は地味だけど味は豊か。それがトリュフの魅力ですね」
ひとつひとつ手作りで作られるショコラは、さまざまな風味や食感が存在し、そしていくつもの工程を経て完成する。「セヌフォ・ラ・ショコラトリー レニエ」は、名古屋のチョコレート文化の発信地であるとともに、世界のショコラ事情をも私たちに提起している。そんなことを思いながらこのチョコレートを口にすると、小さな一粒がとても貴重なものに感じられるだろう。
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【店舗情報】
セヌフォ・ラ・ショコラトリー レニエ
愛知県名古屋市西区五才美18-2
Tel:052-502-0288
営業時間:9:30~20:00
定休日:月曜