TOP > Special > 8月特集「和を身にまとう喜び」
  街歩きをするための着物のポイントを聞いてみた。

「少し短めに仕立てると良いでしょう。そうすると歩幅も広く取れて歩きやすいです。あとは洋服を選ぶように羽織と着物の色の組み合わせなど、自由に楽しめます」

  ここでの注意点は丈を短くしすぎないということだ。絶妙な長さに仕上げるため、〈銀座もとじ 男のきもの〉では“仮縫い”の工程がある。スーツをオーダーする際には行うが、着物の仕立てには、ほとんどの行われていない。しかし、泉二氏はこう語る。

「スーツより高いのになぜ仮縫いがないのか不思議でした。身長だけで丈を決めると、腹回りの肉づきなどで、人によって長さが変わってきます。帯一本でビシッと締めて勝負ですから」

  また、アスファルトやコンクリートのビルに囲まれた街並みを歩くには、紬(つむぎ)、今の季節だと麻や綿などを、藍や草木で染めた自然素材ものが良く映えるという。

  銀座もとじが提案する着物はそんな都会によく似合う着物である。
  泉二氏がこだわるのは“素材”と“顔の見える着物づくり”である。

「食べ物でも、誰がどんな工程で作られているかの表示があるじゃないですか。一反の反物だって誰が育てた蚕の繭(まゆ)を使って、誰が紡いだ糸を使っているかとか、そこには多くの人が携わっている。つくり手の顔が見える着物にしたかったんです」

  そう言って広げた反物には、生産地や人の名前が表示されたラベルが貼られていた。そこにはこんな思いがある。

「つくり手を元気にしたかった。以前ある養蚕農家の方に、でき上がった反物を見せに行ったら涙を流して喜んでくれてね。今まで自分が丹精込めて育てた繭がどんなものになっているか分からなかったとおっしゃった。それからは、蚕の餌である桑の肥料はどうしようとか、蚕が糸をはく時は風通しの良い環境を作るようにしますとか、積極的によりいいものを作ろうとしてくださるようになった。それがとてもうれしかったんです」

  泉二氏は全国の養蚕家や紡ぎ手、織り手といった、つくり手と対話し、消費者にその思いを伝える言わばパイプ役である。

  銀座もとじの着物には、たくさんの登場人物によるストーリーがある。あなたもこの着物を身にまとい、物語の1ページに名前を刻んでみてはいかがだろう。
銀座もとじ
銀座のシンボルである柳を染料とした「銀座の柳染め」や、2007年には世界初となる雄だけの蚕品種「プラチナボーイ」から作られた着物をプロデュースするなど、着物の可能性を見出し、「新しい時代の新しい着物店」づくりに取り組む。
http://www.motoji.co.jp/

銀座もとじ 男のきもの
東京都中央区銀座3-8-15
Tel:03-5524-7472
http://www.motoji.co.jp/storeinfo/OtokonoKimono.htm