TOP > Special > 8月特集「和を身にまとう喜び」
FERIC和装特集の最終回を飾るのは、銀座に業界初となる男性着物の専門店<銀座もとじ 男のきもの>である。素材の良さを追求し、仕立てにこだわった逸品を身にまとい、銀座をぶらりと歩いてみてはいかがだろう。
  銀座もとじの代表取締役である泉二弘明氏は、奄美大島の出身。その気さくな人柄と、着物づくりへの熱意は、青年時代に陸上選手として培ったスポーツマンシップが基盤となっているのだろう。怪我によって選手生命を絶たれた泉二氏の頭にふとよぎったのは、親父さんの形見である奄美大島の『大島紬』だった。

「父からのメッセージだと思いましたね。呉服業界で身を立てろと」

そのときから着物について一から修行を積んでいった。30歳で独立し、今年で創業28年を迎える。2002年には業界初となる男性専門の着物店<銀座もとじ 男のきもの>をオープンさせた。そのときの業界の反応は冷ややかであったという。

「今呉服業界は女性中心だから、男性専門店なんて誰も来やしないと言われました。しかし、いざ開店してみるとお客様からは喜びの声!男性はシャイですからね。女性ものの着物が並ぶ店には入りにくかったようです」

売り場の隅に申し訳程度に置かれていた男性ものでは選択肢も少なかったのだ。
  <銀座もとじ 男の着物>に訪れる人は主に30代~60代。洋服に飽き、ライフスタイルをより広げるため、和装を取り入れようという男性が引き寄せられてくる。

「特に日本の男性にとって、世界で渡り歩くには一番効果的な装いでしょう。実際、お客様の中には海外で長期間過ごした経験のある方が多くいらっしゃいます」

着物は男の色気を引き出すには最高の武器であると泉二氏は言う。銀座のような洗練された大人が集う街でも、その存在感はかすむことはない。

『すみません。ここに行きたいのですけれど……』

  と多くの人でにぎわう銀座で、マダムに声をかけられる泉二氏を目の当たりにし、改めてその威力を実感した。

「着物を着ると、皆に注目されます。そうなると猫背で下を向いてなんて歩けません。自然と目線は上向き、胸を張る。自信が着物に映し出されてきます。次は和装の似合う場所に行きたくなる。美術館に行ってみたり、茶道を始めてみたり。着物を着ることで世界が広がります」
銀座もとじ
銀座のシンボルである柳を染料とした「銀座の柳染め」や、2007年には世界初となる雄だけの蚕品種「プラチナボーイ」から作られた着物をプロデュースするなど、着物の可能性を見出し、「新しい時代の新しい着物店」づくりに取り組む。
http://www.motoji.co.jp/

銀座もとじ 男のきもの
東京都中央区銀座3-8-15
Tel:03-5524-7472
http://www.motoji.co.jp/storeinfo/OtokonoKimono.htm