TOP > Special > 8月特集「和を身にまとう喜び」
  着物の販売に先駆け、2008年3月、「東京発 日本ファッション・ウィーク」の特別イベントとして、山口氏の制作した着物のショー「傾奇者達之系譜(かぶくものたちのけいふ)」が開催された。傾奇者とは室町時代後期から江戸初期にかけての動乱期、派手な身なりで男伊達を競った荒くれ達のことである。

  ショーのために作成された着物の3分の2は、浮世絵や屏風絵に残る絵を元に、傾奇者達が町を闊歩した時代に着られていた色や柄を再現したもの。蜘蛛の巣をあしらったデザインや、破れ格子などの大胆な柄、女性ものかと思わせる鮮やかな色づかいなど、それらは現代の我々が目を見張るほど、鮮やかで個性的である。

  発表された着物の残り3分の1は、山口氏が傾奇者の精神を取り入れ、自由にデザインしたオリジナル作品だ。バーナーで焦げ痕をつけた着物、帯の代わりに巻かれた蛇皮など、本家傾奇者に劣らぬ奔放ぶりを発揮。ショーではロック歌手の内田裕也さんや、舞踏家の田中泯さんら日本を代表する傾奇者たちが着物姿で登場。パフォーマンスを披露し、会場を大いに沸かせた。【ショーの写真】
  ショーの根底にある傾奇者達の生き様を山口氏はこう語る。

  「傾奇者の着物は反骨精神の着物。彼らは人の道は絶対守り、物事を天に照らして正しいかどうかを判断する。尊敬する主のためなら命を捧げ、一方では法律には従わない。死と常に隣り合わせの毎日を送っていた。しかし、ただ荒くれていたわけではなく、人にはやさしく、自然をこよなく愛していた。見せたかったのは、そんな者たちが身にまとっていた着物だ」 

  このショーに懸けた思い、着物に込められたメッセージはここにつながる。 「着物という狭い範囲にとどまらない大きな問題意識がある。それをわずかでもいい、間近に感じてもらえるショーをやりたかった」





誉田屋源兵衛
創業270年の歴史をもつ京都の帯屋。現10代目当主である山口源兵衛氏が創業以来初となる着物制作に取り組む。「あつらえ」の着物は糸からつくるという究極のこだわりが込められた逸品である。

「あつらえ」着物
価格:¥1,000,000~
取扱店舗:
ユナイテッドアローズ原宿本店メンズ館
Tel 03-3479-8180
ユナイテッドアローズ心斎橋 御堂筋店
Tel 06-6484-2032