TOP > Special > 7月特集「ものづくり、日本代表」
  国産ジーンズ発祥の地であり、「デニムの聖地」と呼ばれる、岡山県倉敷市“児島”。児島産ジーンズの名は世界に知れ渡り、海外の有名アパレルメーカーから指名で注文が入る。染め・織り・縫製・加工・洗いに至る、ジーンズづくりの工程すべてにおいて、世界トップレベルの技が生きている町だ。
  古くから染色や縫製の技術が発達した繊維の町・児島。作業服や学生服において全国最大の生産量を誇ってきたこの町で、ジーンズ産業が発展する背景となったのが、昔ながらの分業体制だった。『染工場』『縫製工場』『洗い場』と呼ばれる工場が町中に点在し、さまざまな工程をその道のプロたちが担っている。ジーンズは完成までにいくつもの工場を旅しながら、各分野の職人たちに次々と命を吹き込まれていくのだ。

  日本のデニムが世界に認められている理由のひとつに、染色及び紡績技術の高さがあげられる。デニムは通常、ロープ染色という方法で、糸の状態からインディゴ染めした上で生地となる。ムラ糸といわれる紡績技術で、コンピュータで正確に計算し、人工的にムラを作りながら糸が紡績されていく。糸の表面と内側の染め上がりのバランスによって、ヒゲ(履きジワ)が出やすい生地ができる。この染色には、日本特有の水処理(純度)の良さも関係し不純物の多い海外の水では、同じ染料を使っても日本のように美しくは染まらないのだという。

  また、児島ジーンズへの注目度は、近年の“ヴィンテージ加工”人気に比例する。1960年、日本初のジーンズメーカー『BIG JOHN』が児島に本社を構え、国産ジーンズが普及し始めた。それと同時に、アメリカで1960年以前に生産された“ヴィンテージジーンズ”への関心も高まるように。その流れを受け、新品でありながらもヴィンテージの風合いを持つ“ヴィンテージ加工”がほどこされた国産ジーンズが次々に生まれ、人気を集めるようになっていった。

  “ヴィンテージ加工”には石とジーンズ、酵素を一緒に洗う“ストーンバイオ”(酵素が生地の表面を食べ、程よい色落ち感がでる)、型の上からサンドペーパーを当て人工的なシワを作る、工具で生地の表面を削って穴を開けるなどの“ダメージ加工”などが含まれる。その仕上げ加工技術の高さ、ほどよいダメージ感を生む絶妙なセンスが、児島産ジーンズの持つ大きな魅力といえるだろう。