TOP > Fashion > ファッション コンシェルジュ 小暮昌弘 > ナイジェル・ケーボン、ロマンとこだわりを服に託して

ナイジェル・ケーボン、ロマンとこだわりを服に託して


 

ナイジェル・ケーボン、ロマンとこだわりを服に託して

 ナイジェル・ケーボンに久し振りにあったのは2009年の師走を直前にした冬の中目黒。09年8月末にオープンした彼のフラッグシップショップ近くのオフィスにやってきた彼は英国らしいハリスツイードの「テンジンジャケット」にオリーブグリーンのミリタリーパンツの組み合わせ、人懐っこい表情は、2003年に会ったときと変わらない風貌。

 

 イギリスのデザイナー、ナイジェル・ケーボンを知ったのは私が21歳のころ。アルバイト先の先輩が、こんなカッコいいジャケットがあるとハンティングジャケットを持ってきたのが、「CRICKET」というブランド。パラフィン加工を施し、オイルドコットンのように見えてもベタつかないその服は衝撃的だった。イタリアのファッション誌『ルオモ・ヴォーグ』にも記事が載っていたと思う。程なく日本でも「ナイジェル・ケーボン」の名前でデビュー。1996年には日本に続いてロンドンにも路面店が出来、アメリカのカジュアルとは一線を画すデザインで日本にも多くのファンを持っていた。その後、日本での展開を休止していた時期もあったが、2003年にヒラリー卿エヴェレスト世界初登頂50周年に敬意を表したコレクションで再デビューを果たす。

 

 「昔から親しかった勝勇さん(元アングローバル社長、現アウターリミッツ社長)に相談したら、妥協のない商品を作れば、と助言されたので、思いっきり自分らしいものを作ったんです」

 

 

ナイジェル・ケーボン、ロマンとこだわりを服に託して

 

 

 彼が作ったのは、世界最高峰のエヴェレストに世界初登頂したエドモンド・ヒラリー卿が実際に着ていた登山服がデザインの源。ヒラリー卿と一緒に映っている登山隊クルーの写真を彼が入手したのがきっかけで、ベンタイル(高密度で織られ、防水機能を持ったイギリスを代表するコットン素材)を始めとした1950年代当時に使われていた素材を使い、しかもイギリスで生産したコレクション。前述の「テンジンジャケット」はヒラリー卿と共にエヴェレストに登ったシェルパ、テンジン・ノルゲイが着ていたジャケットからインスパイアされたもの。各アイテム世界限定50点という希少なもので、商品のほとんどに登山隊メンバーの名前が付けられている。メンズクラブ でも10ページくらいを割いて特集した。「よく覚えているよ。あの写真、すごくよかったね」とケーボン氏。エヴェレストをイメージして雪の中に埋もれるような服の写真を撮ったのを彼が憶えていてくれたのだ。

 

 この実験的なコレクションは日本、アメリカ、ヨーロッパでも販売されたが、イギリスでの評判が高く、特に有名百貨店「リバティ」での販売が絶好調で、一旦輸入した商品を返送した憶えがあると勝氏が言う。

 

 

<< PREV | 1 | 2 NEXT >>

 

 

ナイジェル・ケーボン、ロマンとこだわりを服に託して

 

THE ARMY GYM‐Nigel Cabourn
お洒落なショップが立ち並ぶ目黒川沿いにオープンしたフラッグシップショップ。ナイジェル・ケーボンの世界観を如実に表現したショップで、彼のフルコレクションの他、ナイジェル自身がセレクトしたユーズドウエアや書籍なども並んでいる。
東京都目黒区青葉台1-21-11 1F
☎03-3770-2186 http://www.cabourn.jp/