フランスの映画ルイ・マルの「死刑台のエレベーター」、ロジェ・ヴァディムの「危険な関係」を子供の頃に観て、早く大人になりたいと思った。不倫殺人と姦通の ドラマ、どちらもインモラルでスリリング。モーリス・ロネ、ジェラール・フィリップともにスーツ姿が本当に大人だった。バックに流れる音楽は、マイルス・ デイヴィスやアート・ブレイキー＆ジャズメッセンジャーズ。ともにジャズだった。ジャズレコードのアルバムジャケットでポーズするミュージシャンの姿にも 憧れ、その独特なクールなスーツ姿は粋な大人の男そのものだった――。

　 1970年代に入りサブカルチャー、カウンターカルチャーなどと騒がれ始めた頃から、大人になることへの拒絶。いつの間にかスーツは、ダサい服装の象徴に成り下がった。あるいはサラリーマンの道具としての服装に――。

　 クール ストラティンは、1950年代から70年代初頭までの、ニューヨークのジャズミュージシャンのスタイルを継承している。また同年代にジャズから多くをイン スパイヤーされたビートジェネレーション、パリの実存主義、ヌーベルヴァーグの匂いも蘇らせたいと考えている。スーツとジャズの復権、それは同時に大人た ちへの賛歌でもあるのだ。